アメリカ 2018
監督 ジェームス・ワン
原案 ジェームス・ワン、ジェフ・ジョンズ、ウィル・ビール
DCエクステンデッド・ユニヴァースの第6作目にしておそらくシリーズ最高傑作でしょうね。
はからずも私は、すげー評判の悪かったバットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生(2015)を除いて全部見てるんですけど、振り返るなら一作目にあたるマン・オブ・スティール(2013)が一番よく出来てたんじゃないか?と思ってまして。
以降は話題を振りまきつつもずっと低空飛行だった気がするんです。
決定打はジャスティス・リーグ(2017)でしょうね。
なんだこの東映マンガ祭り夏休みヒーロー大集合みたいな仕上がりは、と呆れました。
本来ならマーベルのアベンジャーズに勝るとも劣らぬ出来でなきゃいけなかった、と思うんですよ。
比較されるのを承知でやってるわけだから。
足元にも及んでませんからね、ほんとに。
こりゃダーク・ユニヴァースみたいに企画も立ち消えか、なんて懸念を抱いたりもしたんですが、まさかここに来てジェームズ・ワンが全部ひっくり返してくるとは夢にも思いませんでしたね。
ワイルド・スピード スカイミッション(2015)で、ホラーやスリラー以外もやれることを証明してみせた監督ですが、アメコミのヒーローものはまた全然別物ですから。
アメコミの実写化って、匙加減が難しいと思うんですよ。
リアルになりすぎてもいけないし、かといって子供だましでもいけない。
現実に即した世界観を有しつつも、荒唐無稽をもっともらしく観客に信じ込ませなきゃいけない。
そこをどうクリアしていくんだろ?と思ってたんですが、ジェームス・ワンはこれまでの流れを一旦全部反故にして、新たな海洋冒険ファンタジーとして成立させることで課題を乗り越えてきましたね。
ま、ぶっちゃけ地球の話とは思えないです。
どう考えても海の中にあんな連中が巣食ってるとは思えないし、登場人物たちの出自であるアトランティスもさんざん研究され尽くして結局なにもわかってないのが現在の定説ですし。
けれど、じゃあロード・オブ・ザ・リングは非現実的だからつまらないのか、というと決してそうではないわけで。
アクアマンを立脚させることだけにこだわって、逆に世界の方をまるごと塗り替えてしまった手口は、もはやアメコミ云々を通り越して独立したハイ・ファンタジーと言っていいように思いますね。
DCエクステンデッド・ユニヴァースとか、もう関係ないし。
アクアマンである必要が全然ないんですよね。
海洋王国の王位継承を巡る王子の物語として別腹で十分楽しめる。
むしろDCの看板が邪魔に思えてくるぐらい。
圧倒的な色彩美と美術、海洋生物の動きにこだわった海中の描写が、見たことなさすぎて一気に物語世界に引き込まれた、というのもあった。
これ相当大変だったんじゃないかと思いますね。
人物の海中における所作、動線も意識しなきゃいけないわけですから。
また、アクションシーンのカメラワークがとんでもなくて。
序盤でニコール・キッドマンが兵士相手に大立ち回りを披露するシーンがあるんですけどね、あたしゃ若き日のミシェール・ヨーか、と腰を抜かした。
動けるわけがないんですよ、51歳で訓練積んでるわけでもないんだから。
なのに球面に360度、縦横無尽に動き回るカメラがキッドマンを武術の達人のように仕立て上げる。
いつの間にこんなことやれるようになったんだ、監督よ、とあんぐり。
冒険とラブロマンスを過不足なく配分した脚本も秀逸。
終盤の桟橋における邂逅シーンなんて主人公を差し置いて大感動ですよ。
なんの名画なんだこの絵は、って話だ。
ジェームズ・ワンはハリウッドにおける最も成功したアジア人監督になるかもしれませんね。
文句なし、ここまでやるとは思わなかった。
しかしこれ、どうやってバットマンやスーパーマンの世界観とリンクさせていくつもりなんだろうなあ。
ジャスティス・リーグ2があるなら、の話ですけどね。
完全に別物になっちゃってますしね。
ちなみに全編CGまみれすぎてちょっと目が疲れてくる人も中にはいるかも知れません。
途中で休憩するのもありだ、なんせ143分だし。
ま、私のことなんですけどね。
もうDCはアクアマンメインでやってけばいいんじゃないか、と思いますね、そこにしか活路はないんじゃないでしょうか。