ある女流作家の罪と罰

ある女流作家の罪と罰

アメリカ 2018
監督 マリエル・ヘラー
原作 リー・イスラエル

売れなくなった女性作家が、私文書偽造に手を染め犯罪者へと転落していく様を描いた実話ベースの作品。

なるほどなあ、こんな稼ぎ方があったのか、と見ててちょっとした驚きはありましたね。

ま、犯罪には違いないんですけどね。

主人公のリー・イスラエルなんですが、かつては1950年代の有名人やセレブの伝記作家として売れっ子だったが、90年代に入ってから読者の世代交代が進み、かつてのように本が売れなくなった境遇にありまして。

家賃は滞納、飼い猫の治療費は払えない、明日の食費にも事欠く始末。

それで思いついたのが、自分がこれまでさんざん研究してきた50年代の名の知れた人物の手紙を偽造して、コレクターズショップに売りつけること。

そりゃ研究してる上に文筆業を生業としてるわけですから、その人物が書きそうなことを創作するのはお手のもの。

400通以上創作してバレなかった、ってんだからいかに巧緻だったか、ってことですよね。

なんせ1通が400ドル~600ドルで売れる。

そりゃ、やめられませんよ。

ただ、いかに手練れであろうと、ほころびってのは生じてくるもので。

やがて真贋の確かならぬ物品を持ち込む要注意人物としてショップからマークされる。

そこで登場するのがかつての知り合いだったゲイのじいさん。

二人でコンビを組んで顔バレをカバーしていくんですね。

で、この二人、実は似たもの同士だったりしまして。

共通するのは社会から顧みられることのないマイノリティな存在であり、孤独であるということ。

彼と彼女は、犯罪を共謀する仲間であること以外に、いったいどんな関係性にあったのか。

それがこの作品のテーマ。

そりゃね、バッサリ切り捨てちゃうなら、売れなくなった時点で諦めて別の仕事に就けよ、って話だったりもします。

はっきりいって浅ましいし、作家の末席に身を置く者として禁忌をおかしてる、と思う。

けれど、本当に彼女が欲していたのはなんだったのか?を考えたとき、過ちを経て罰をうけることでしか気づけないことってのも、人によってはあるわけで。

そこを紋切り調に否定したって答えは出てこない。

生き方を変える、って大変なことですからね。

偽造した手紙を作品と呼ぶリー・イスラエルに、哀れみと共感を私は同時に感じたりもした。

創作に身を置く人ならこのあたりの複雑な感情は理解できるんじゃないかと思いますね。

また、主演のメリッサ・マッカーシーが50代の化粧っ気のないうらぶれた女を絶妙な演技で表現してまして。

てっきりコメディエンヌだと思ってたんで驚きでしたね。

とてもSPY(2015)と同一人物だとは思えない。

SPY

キャシー・ベイツの衣鉢を継ぐのはこの人しかいないんじゃないか、と私なんかは思ったりもした。

で、見事だったのはエンディング。

はっきりいってこれは泣く。

原題である、CAN YOU EVER FORGIVE ME?( あなたは私をいつか許してくれるかしら? )がそのまま訴えてくる喫茶店でのシーンは出色だったといって差し支えないでしょう。

社会の影に生きる人達に焦点を当てた秀作だと思いますね。

必要ない、と思っていたことにこそ人生の喜びがあったと示唆する胸打つ一作でした。

DVDスルーが不思議に思える完成度は保証します。

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