ブリグズビー・ベア

アメリカ 2017
監督 デイブ・マッカリー
原案 カイル・ムーニー

ブリグズビー・ベア

赤ん坊の頃に誘拐され、以後25年間に渡り軟禁生活をおくった青年ジェームズの解放後を描いた人間ドラマ。

さて誘拐監禁というと近作ではルーム(2015)を思い出したりなんかもするわけですが、似たような設定ながらこちらはそれほど暗くもシリアスでもありません。

荒野で暮らし、外界には毒を含んだ空気が充満してる、と信じ込まされ、一切の情報はシャットアウトされてるんですが、誘拐した当人である夫婦が愛情を持ってジェームズに接しているので、不自由ながらも本人はさほど追い詰められた様子はない。

なんせ夫婦は教育と娯楽を兼ねて、オリジナルビデオをジェームズのために制作するほど。

それが本作のタイトルとなるブリグズリー・ベアなんですが、これが何十巻にも及ぶ大河宇宙冒険もので、ジェームスはそれに夢中。

てか、どこに力入れてんだ、誘拐夫婦!といささか呆れたりもするんですが、これも彼らなりの教育の形だったのかな、とふと思ったり。

決して彼らも悪人じゃないんだ、と訴えたかったのかもしれません。

物語はそんな特殊な環境に育ったジェームスが、実の親と暮らすようになって、何を心の拠り所とするのか?を追っていきます。

描かれているのは、我々の価値観や尺度で一般社会に馴染めるよう矯正を施すことが、すなわち本人のためになるとは限らない、というひとつの摂理。

そういう意味でははじまりへの旅(2016)に質感は近いかもしれません。

で、この作品が独特だったのは、なにに価値を見出すのかを問うと同時に、創作の喜び、情熱を活写していることでしょうね。

そこはアメリカのコメディユニット GOOD NEIGHBORのメンバーが監督、主演を努めてることも大きく影響してるかもしれない。

終盤の展開なんて僕らのミライへ逆回転(2008)か!と思いましたもん。

不思議に温かい気持ちになれる一作でしたね。

劇中劇ブリグズリー・ベアの昭和感満載な特撮ドラマを楽しむのもこれまた一興。

しかし、誘拐犯にスターウォーズシリーズのマーク・ハミルをキャスティングしてくるセンスが笑えますね。

時が経つにつれ、徐々に人間味豊かな表情をみせるようになるジェームズを細やかに演じ分けたカイル・ムーニーも門外漢とは思えぬ芸達者ぶりで良し。

もう少し紆余曲折あってほしかった、と思ったりもしましたが、誘拐ものをこういう形に料理した独創性を私は評価したいですね。

良作だと思います。

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