イギリス/フランス 2017
監督 ジャン・ステファーヌ・ソヴェール
原作 ビリー・ムーア
ヘロイン使用の罪で逮捕されたイギリス人キックボクサーが、異国タイの刑務所でムエタイに没頭することにより、これまでの人生と決別する様子を描いた格闘技ドラマ。
久々にかっこいい邦題が来たな、と思いましたね。
原題はA PRAYER BEFORE DAWNなんですけど、それを「暁に祈れ」と意訳するセンスがいい。
ただ残念ながら内容は、いかす邦題とは裏腹に、まったくもって低調と言わざるを得ないでしょうね。
何がダメって、この映画、延々最後まで経過を羅列してるだけでして。
はい、逮捕されました。
タイの刑務所は言葉も通じなくて、荒くれ者だらけで大変です。
監獄は大部屋で雑魚寝で不衛生で、周りは暴力沙汰やレイプが横行してて気が休まりません。
おや、ムエタイのジムが刑務所内にありますね。
よし、ムエタイやろう。
これで待遇も変わって、薬の誘惑からも逃れられるかもしれません。
そこそこ強くなったんで、他の刑務所との対抗戦にでれそう。
出ました。
以上。
もうね、監督は演出及び脚色という言葉を知らんのか?と。
わざわざ実際の犯罪者たちを集めて刑務所内を再現した意味、全くなし。
リアリズムの喚起には一役買ってたかもしれませんが、ほんとそれだけ。
まー、盛り上がらない。
絵的には派手なのに、恐ろしく地味というか。
シナリオ進行を振り返るなら、やりようはいくらでもあったと思うんですよ。
所内で仲良くなった囚人との心の交流をじっくり描くとか、ムエタイのライバルをでっち上げるとか、薬物を回してくれる看守との決別をきっちり描くとか、ドラマチックにしようと思えばいくらでも手を加えられた。
全部、あっさり流しちゃうんですよね監督。
・・・こういうこともありました。で、その次にはこういうことがありまして。そして、こんなこともあったみたいです。おわり。
小学生の作文か。
もしこれスタローンあたりが脚本に噛んでて制作に携わってたら、怒涛の感動大作になってたと思います。
どれもこれもめちゃくちゃいい素材なのに、それをここまでぞんざいに扱って腐らせるか?と。
原作が本作の主人公でもあるビリー・ムーアの手記らしいんで、事実に忠実であろうとしたのかもしれませんが、手記をそのまま映像化して良し、とするのは映画ではなくて再現フィルムなわけです。
凡作。
ああ、もったいない。
期待してただけにがっくりでしたね。
邦題のかっこよさはなんだったんだ、もう。