特捜部Q カルテ番号64

デンマーク/ドイツ 2018
監督 クリストファー・ボー
原作 ユッシ・エーズラ・オールスン

特捜部Q カルテ番号64

おなじみカールとアサドのコンビが未解決事件に挑む、特捜部Qシリーズ第4弾。

監督は前作のハンス・ペテル・モランドからクリストファー・ボーへとタッチされてますが、別段なにかが大きく変わったような印象は受けません。

これまでの流れに逆らうことなく、無難に課題をこなしました、みたいな感じ。

それでもデンマークで過去最大のヒットを飛ばしてしまうんだから、もうこのシリーズに関してはよっぽどのド素人でもない限り、誰がメガホン握ったところで大歓迎されるキラーコンテンツである、ということなんでしょうね。

やっぱりこれは原作の持つ力なんだろうなあ、と思います。

ま、映画なりのキャラクター設定や細部の改変はあるみたいですし、実際何が小説と違うのか、 私はいくつか耳に挟んでるんですが、それを勘定に入れても面白いんだからもう手のつけようがない。

そもそもカールという人付き合いのどヘタクソなはみ出し刑事と、情け深く友愛にみちた移民のアサド刑事の付かず離れずなやりとりがバディものとしてとても良く出来てると思いますし、毎回題材となる事件も切り口が目新しくて既視感を感じさせないものばかりですしね。

4作目である本作もそこはブレることなく安定してて。

特に今回の事件、スプロー島の女子収容所をモチーフとしたミステリは、日本人にとっても実にタイムリーだったと思いますね。

この女子収容所、1921~62年までデンマークに実在した施設らしいんですが、収容されていたのは知的障害がある、もしくは淫奔であると断ぜられた女性。

何が行われていたかというと、強制不妊手術。

彼女らは優生学的に劣るから子孫を残してはいけない、と国が規制してたというわけ。

ナチスドイツかよ!って話ですよ。

しかも淫奔だからだめ、ってデタラメもここまで来たら怒りを通り越して呆れ返りますよね。

優生学どころか、誰かにとって都合のいいように選民してるだけじゃねえかよって。

こんなことが1962年まで現実に施行されてたというのにも驚きますが、それと似たような事例が我が国における旧優生保護法に他ならないわけで。

そりゃストーリーにのめり込みもしますよ、だって対岸の火事じゃないですもん。

国内においては現在係争中の案件ですしね。

また、シナリオが見事だったのは、そんな重いテーマをつまみ食いとばかり無造作に散らかすのではなく、きちんと向き合った上でエンターティメントとして仕上げたこと。

隠し部屋からテーブルを囲んだ「あるもの」が出てくるシーンなんて、事件の幕開けとしちゃあミステリファンも浮足立つインパクトですよ。

そこからの謎解きと、カールとアサドの関係性を含めたドラマ作りも文句なしの完成度。

正義を完遂するカタルシスと、ほのかな感動が待つエンディングなんて私がプロデューサーなら即リメイク権獲得で来春ハリウッドにて公開だ。

カール役は是非ヴィゴ・モーテンセンあたりにつとめていただきたいところだが、なんならジョエル・エドガートンでもいい。

トムとかレオとかはだめ。

出たいと言ってもだめ。

なんの話だ。

しかしまあちょっと低調気味かな、と思われた三作目から再び軽々と盛り返してきましたね。

このまま10作ぐらい作っていただきたいものです。

北欧ミステリ、といえば特捜部Qでもういいじゃない、と思う今日このごろ、時間が許すのであれば是非一作目から追っていただきたいと思う次第。

ところでカールはいつのまにキジ殺しのダメージから立ち直ったんだ・・・。

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