へレディタリー 継承

へレディタリー 継承

アメリカ 2018
監督、脚本 アリ・アスター

祖母の他界をきっかけに、徐々に家族関係が崩壊していくグラハム家の悪夢を描いたホラー。

2018年最恐のホラー映画と話題になった本作ですが、やっぱりお見事だったのは細かなドラマ作りと役者の演技にこだわって、類型化を拒絶していたことでしょうね。

わかりやすい虚仮おどしに拘泥してないのもいい。

「暗がりに誰か立ってる」程度のことはやってるんですが、エンディングに至るまでのおよそ1時間40分、凡百のホラー映画が安直にやらかしそうな派手な脅かしは一切ありません。

じゃあそのかわりに何をもってして恐怖を煽ってるのか?ってことなんですが、これ、積み重ねられていく「狂気」だったりする。

序盤に相当ショッキングな場面があるんですが、そこからの語り口は、ホラーどころか痛々しく重苦しい心理ドラマ風で。

特に私が舌を巻いたのが、家族にとってトラウマ級の出来事をすぐに処理せず、一旦時間をおいてから後に、互いの腹にあるものを一気にぶちまける構成でして。

見てる側としちゃあ、すごく不安になってくるんですよね。

あれだけのことがあったのに、なんでこの家族は長男に対してしれっ、と素知らぬ顔をしてるんだろう、みたいな。

普通なら一家離散ものだろう、と思ってるところに、揺り戻しとばかり突然感情が爆発するもんだから驚きと納得が入り混じってもう、画面に釘付けですよ。

どうなるんだ!これ!的な。

引きのうまさ、と言ってもいいかもしれませんね。

同時に「ああ、でも実際はこういうものなのかもしれんな・・」と思ったりもする。

ホラーとか関係なしに、普通にリアルな家族ドラマとして見れてしまうんですよね。

これは強力な強みだったと思いますね。

だからその後の降霊云々が絡んでくる胡散臭いくだりも、眉をひそめることなく追えてしまう。

土台がちゃんとしてるから突飛さが興ざめを招かないんです。

結果的に登場人物の常識外の行動が、狂気としてあぶり出されていく。

キューブリックと比較してる方もおられるようですが、それもわからなくはないですね。

映像センスはともかくとして、とても低予算ホラーとは思えぬトニ・コレットの迫真の演技に、私はシャイニングのシュリー・デュヴァルを思い出したりしましたし。

まあ、怖いですよ。

役者は鬼気迫る取り乱しぶりだわ、ストーリーはどんどん譫妄の度合いを増してくるわで。

こりゃ一級品のホラーだな、と結末を迎える前に早くも確信。

で、肝心のエンディングなんですが、これね、ちょっとわかりにくいです。

私も一回みただけじゃ納得できなかったんで、気になるシーンを再度見たりしたんですが、それでようやく「ああ、そういうことか」と理解。

エンディング、ぎゃっ!と声を上げたくなるようなゴアなシークエンスとかあって、最後の最後でホラーとして本気出してきたな、と思わせるものはあるんですが、オチのみを評価するなら、ま、それほど意外性はなかったかな、と。

落とし所に類似する過去作はいくつかありますよね。

それを列挙するとネタバレになっちゃうんで、書けないのが残念ですが。

でもまあ、ここまでやってくれたら文句はないですね。

多分この監督はホラー以外の映画をとってもそこそこのものを作り上げてくる、と思います。

長編デビュー作としては出来過ぎなぐらいの一作だったと思うんで、これを2018年度の収穫と捉えて間違いないんじゃないでしょうか。

次作が気になりますね。

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