女王陛下のお気に入り

アイルランド/アメリカ/イギリス 2018
監督 ヨルゴス・ランティモス
脚本 デボラ・ディヴィス、トニー・マクナマラ

18世紀初頭、初めてグレートブリテン王国の君主となったアン女王とその取り巻きを描いた宮廷ドラマ。

いやもう、なんといいますか、ヨルゴス・ランティモス監督の嫌らしさというか、不気味さの炸裂しまくった一作でしたね。

そこはもう全然ブレてません。

聖なる鹿殺し(2017)でキツイのを一発食らった人は今回も十分満足の行く仕上がりなのではないか、と。

ただ、本作がこれまでと違うのは、圧倒的にシナリオがわかりやすいことでしょうね。

寓話っぽい謎めかしがほぼないんです。

やってることをシンプルに言うなら「大奥絵巻」。

アン女王の寵愛を受けて宮廷内に自分の居場所を作るべく、権謀術数をはかる二人の女の物語、と言っていいでしょう。

いわゆる権力闘争的な、よくあるお話といえばよくある話。

しかしながらそれも監督の手にかかると、まるで異形の肌触りを醸し出すのだからほんとこの人は色々おかしい、と思いますね。

とりあえず私が一番気になったのは、妙にアクロバティックなカメラワーク。

すげえ変な位置から撮ってるな、と思いきや、いきなり恐るべき高速さで180度パンしたりするんですよ。

流麗と言いたいところなんですが、むしろ未確認飛行物体の航行軌道と言ったほうが正しいかも。

あと、微妙に歪んで見えるのも気になったんですけど、これ、見終わってから調べたら広角レンズや魚眼レンズを多用してるんだとか。

もー普通に変。

こんなこと以前からやってたか?と頭を捻ったんですが、どうやらもともとこういう撮り方を好む人だったよう。

完全に見過ごしてるな、俺。

なぜ今になって急に気づいたのか自分でもよくわからんです、ほんと節穴ですまぬ。

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音使いも相変わらずで。

しつこいぐらいの反復音が続いたか、と思えば、いきなりなんでもないシーンで突然ヒステリックに不協和音チックな音が鳴り響いたり。

だからびっくりするからっ!つー話で。

バリー・リンドン(1975)丸出しの自然光にこだわった撮影も異質さを際立たせるのに一役買ってる。

城内とか暗すぎてほとんどホラーですしね。

なんてことのない「椅子取りゲーム」のドラマなのに、とかく表現手法が変わってるから全部がいびつに、屈折して見えてくるんですよね。

この内容ならそうそうイレギュラーなことは起こるまい、と思いつつも、まるで油断できないというか。

また、主要登場人物3人のキャラが恐ろしく濃くて。

エマ・ストーンの化けっぷりもすごかったんですが、やっぱり強烈だったのはアン女王を演じたオリビア・コールマンでしょうね。

よくぞまあ、こんな性格の破綻した幼児性の残る女をシラフで演じれたものだな、と。

近年稀に見るぐらい嫌な女王像でしたね。

イギリスの王室がクレームつけるんじゃねえか?と思えてくるぐらい。

なんだか「実はちょっと笑わせたい」と思ってないか?と感じられる演出があったのも混乱に拍車をかけました。

ひょっとしてとんでもなくブラックなコメディなの?みたいな。

総ずるなら、とても宮廷ものの枠組みに収まりきらぬトリッキーな鬱屈戯画、とでもいったところでしょうか。

監督にしか撮れない作品なのは間違いないですね。

ちなみにエンディングは相変わらず煙に巻かれちゃうような感じで、よくわからないんですけど、今回に限ってはなんとなく意味することが伝わらなくもない感じ。

・・・結局また泥沼かよ、みたいな。

定形外のユニークさが癖になる、異色の一品。

手に取る価値は十分にあるんじゃないでしょうか。

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