蜘蛛の巣を払う女

アメリカ 2018
監督 フェデ・アルバレス
原作 ダヴィッド・ラーゲルクランツ

蜘蛛の巣を払う女

さてこの映画がドラゴンタトゥーの女(2011)の続編にあたるのか、それとも違うのか、よくわからないんですけど、「ミレニアム4」を原作としている点を鑑みるなら純粋な続編とは言えなさそう。

ドラゴンタトゥーの女は「ミレニアム1」が原作ですしね、えっ?2と3はどこへ行っちゃったんだよ?って話なわけで。

キャストも総入れ替えになってることですし、仕切り直しと考えるべきなんでしょうね。

しかしドラゴンタトゥーの女は続編作る気満々の終わり方だったのに、見事に全部なかったことにされちゃいましたね。

念入りに伏線ひいてたデヴィッド・フィンチャーはさぞ悔しかろうなあ、と思ったんですが、クレジットみたら製作総指揮に名を連ねてた。

ええっ、いいのかよ?!って。

いちいちハリウッドのやり方に目くじら立ててられない、といったところなんでしょうか。

けど、それならそれで仕切り直しらしく、リスベットとミカエルの関係性やおのおののキャラをきちんと説明してあげてほしい、と思ったりもしましたね。

純粋な続編とは言い難いのに「みんな知ってるでしょ?」とばかり、なにも語らないんですよ。

なのでこの映画から入った人にしてみれば、主人公リスベットがどういう人物で何が出来て、どういう生き方をしてる人なのか全くわからないでしょうね。

これは不親切とか言うレベルの話じゃなくて、手落ちだと私は思います。

知ってる私ですら物語に入り込みにくかった。

ただでさえ役者が変わってて受ける印象が違うのに、なんでこんなルーズなことやるんだろう?と思いますね。

で、肝心の内容なんですが、さすがはドント・ブリーズ(2016)で名を挙げたフェデ・アルバレスが監督してるだけあって、一定の水準以上の出来には仕上がってます。

薄暗い絵作りがなんとなく前任者フィンチャーを思い起こさせたりもするんですが、これは影響受けてるというより、単に北欧をロケ地としているからかもしれません。

ずっと雪降ってるし。

謎解き重視というより、どちらかというとアクション主体の映画かもしれませんね。

そういう意味では前作のような「お前が犯人だったのか!」みたいな驚きはない。

しいては天才ハッカーであるリスベットの魅力を十分に引き出せている、とは言い難い。

原作がどうなのかは知らないんですけどね、なんだか男と取っ組み合いばかりしてるんですよねリスベット。

いつからお前は武闘派になったんだ、と。

あとね、今回リスベット役に抜擢されたクレア・フォイなんですが、どうなんでしょう、私はどうにもピンとこなくて。

やっぱりリスベットって、天才的だけどどこかぶっ壊れてる女ってイメージが私にはあって。

前任者のルーニー・マーラはそこを巧みに表現してた、と思うんですね。

クレア、下手だとはいいませんが、なんか健全なんですよね。

別にお前はなにも心の奥底に抱え込んでたりしないだろ?みたいなのが透けて見えるというか。

というか、ぶっちゃけ私の感覚では久本雅美じゃねえのか?と。

ふと垣間見せる表情がマチャミじゃないかよ、って。

ショートカットがあんまり似合わない、って監督は気づくべきだったと思うんですが、えっ?私だけ?

ミカエル役のスヴェリル・グドナソンも、さすがにダニエル・クレイグと比肩するとは言い難いですしね。

決してつまらなかった、ってわけじゃないんですが、フィンチャー版の前作と比べるとどうしても見劣りする、ってのが実状じゃないでしょうか。

せめてルーニー・マーラは継続して出演させるべきだったと思うんですが、うーん、次、あるんでしょうかね、ちょっと危うそうな気もしますね。

あんまり肩に力入れて見なくてすむ分、親和性は高いかもしれませんけどね。

佳作、ですかね。

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