スターリンの葬送狂騒曲

フランス/イギリス/ベルギー/カナダ 2017
監督 アーマンド・イヌアッチ
原作 ファビアン・ニュリ

かの有名な旧ソ連の独裁者、スターリンの没後に巻き起こる後継者選びをコミカルに描いたブラックコメディ。

私はてっきりロシア映画だと思ってて、よくぞまあロシアでこんな毒のある映画を撮れたものだなあ、と感心したりもしてたんですが、違った。

ロシアでは上映禁止になったそうです。

そりゃそうだろうなあ。

原作はフランスのグラフィックノベルで、監督は主にイギリスで活躍してる人。

必ずしも史実に忠実ではない、と原作者ファビアン・ニュリは公言してますんで、あれこれ差し引いて見なけりゃいかんのでしょうけど、だとしても「よく出来てる」と言わざるを得んでしょうね、これは。

もう、いちいち「ありそう」なんですよ、スターリンを取り巻く連中の言動や振舞いが。

もちろん滑稽味を増すディフォルメは施されてるんでしょうが、絶対君主亡き後の混乱と策謀に、取り巻きのキャラが額に青筋立てて右往左往するのを見てるだけで笑えてくる。

いい年したオッサン連中が飽くなき権力志向を満たすために必死なんですね。

なりふり構ってられない、とはまさにこのことか、みたいな。

けれど登場人物たちに、自分たちが悲喜劇を演じてる、という自覚はない。

それを観客にたやすく悟らせる映画作りがなんだかもう玄人はだしとでもいうか。

モンティ・パイソンを思い出す、とおっしゃってる方もおられるみたいですが、納得ですね。

つまりは、言うまでもなく根底にあるのは権力や権威に対する反骨であり、アイロニーだということ。

それをおかしな屈折や内省に囚われず、中途半端なシリアスさを排除して演出してるのがやたらと小気味いいし、普通にセンスがいい。

しかしまあ、こんな連中が国家の中枢で政治を担っているのだ、と思うと他国の話ながら情けないやら泣けてくるやらで。

それでいて最後には 、これ、きっとソ連に限った話ではないよなあ、と察知させる仕上がりとなっているのがこれまた舌を巻くというか。

優れた風刺劇だと思いますね。

なかなかここまで毒と笑いを同居させたコメディって、近年はなかったように思います。

完全にフルシチョフになりきってるスティーブ・ブシェミの演技も必見。

こういう映画こそロシアで上映されなきゃいかんのになあ、とつくづく感じましたね。

おすすめですね。

政治家の言うことなんて1ミリも信用できなくなること請け合いです。

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