万引き家族

日本 2018
監督、脚本 是枝裕和

生活していく上で不足しているものは、およそ万引きで生計をたててる疑似家族を描いた人間ドラマ。

簡略化して内容を説明しちゃうと「底辺の糞一家じゃねえかよ!そんなドラマ見たくもねえわ!」って切り捨てられてしまいそうですが、もちろんそういった物語のアウトラインだけでこの作品のすべてが語れるはずもなく。

内外で高い評価を得たのには理由がある。

それは間違いないです。

まず、表題にもなっている万引きですが、決して依存症、というわけではないんですよね。

スリルを求めるクレプトマニアではない。

罪の意識は見事に欠落してますが、必要に応じて必要なものを調達する、というスタンス。

万引きで裕福な生活を満喫してるわけじゃないんです。

登場人物たちはそれぞれが仕事をしているんですが、その収入だけでは婆ちゃんの年金をあわせてもまともな生活ができない。

ごく質素に、平均的な生活を子どもたちと送っていくためにチョイスした選択が軽犯罪、というオチ。

ま、ぶっ壊れてるな、とは思います。

けれどぶっ壊れるのにも理由があるんだよ、と作品は語りかけていて。

罪を許容しろ、って言ってんじゃないんですよね。

そうせざるを得ない状況を形成しているのはなんなんだ?という話。

ここ重要なんですが、登場人物たちの誰一人として、小ずるくはあっても、悪人じゃないんですよね。

一攫千金を狙う窃盗団じゃないんです。

本質は慎ましやかな小市民にすぎない。

だから、なぜ普通に仕事をしていて、小市民が普通に暮らしていけないの?という懐疑が物語の根底にはある。

この作品がすごかったのは、そんな欠陥人間たちの集団を擬似家族として描いたこと。

婆ちゃんは孤独を埋め合わせる術として同居を許し、夫婦はほんの少しの親切心から子供の面倒を見る。

打算じゃないんですよね。

今、両手に持てる分だけの荷物でやれることをやったら、なんかわからんが諸問題が解決してた、ってのがミソ。

そこにあるのは「万引きをやらなきゃ生きていけないような集団が少し手を差し伸べただけで解決することが、なぜ福祉や行政、私達をとりまく社会で解決できないの?」といった強烈な皮肉。

普通の家族よりもずっと家族らしくみえる描写の数々が、現代社会の抱える核家族の闇を鮮やかに照らし出します。

そりゃもうやたらと眩しく感じてしまうほどに。

終盤の展開におけるストーリー運びも見事の一言。

正しさを貫くことが時には取り返しのつかぬ病毒にもなる、と不寛容社会に生きる我々は本当に理解しておいたほうがいい。

また、その発端となったのが、救われたはずの子供だった、というのがなんともやるせない。

正解はどこにもないです。

どうすればよかったのかなんて、どこにも書いてない。

だから考えていきましょうよ、というのがこの映画の立ち位置。

うたかたの幸福を家族の形に切り取ることで、現代社会が抱え込む闇をえぐり出してみせた傑作だと思います。

しかし、それにしてもラストシーンがせつなすぎる。

カンヌはあんまり信用してないんですが、この作品に限っては慧眼を認めざるを得ない、と思いましたね。

評判に偽りなし。

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