カメラを止めるな!

カメラを止めるな!

日本 2018
監督、脚本 上田慎一郎

制作費300万円の低予算作品ながら国内外で数々の映画賞を受賞し、最終的には31.2億円の興行収入を計上した怪物映画なわけですが、ああ、なるほど、これは確かに広く支持されるはずだわ、と見終わって妙に納得。

未見の人とまず共有しておきたいのは「この映画はホラーじゃないよ」ってこと。

むしろホラーだと思って見ると激しく肩すかしをくらいます。

どっちかというと普段、非ホラーな作品を好む人こそこの映画の良き観客となりうるかもしれません。

私なんざゾンビ映画だと思って視聴に臨んだものだから、前半の30分程がとにかくもー、恐ろしく辛かった。

なんだよこれ、学生の自主制作かよ、って。

ブレまくる手持ちカメラの映像は安っぽいわ、シナリオは陳腐だわ、役者は大根だわ、おかしな間がところどころにあるわ、なんの緊張感も演出できてないわで、ほとんど頭痛がしてくるレベル。

もうとてもとても2018年に作られた作品だとは思えなくて。

いくら低予算とはいえ、程度があるだろう、と。

同じく100万ほどのローバジェットで、似たようなプロセスをたどり大ヒットしたパラノーマル・アクティヴィティ(2007)の方がよっぽどマシな仕事してたぞ、と。

ただただ混乱です。

なんでこれがヒットするの?

日本人はついに頭がおかしくなっちゃったの?ってなもんです。

前評判を知らずに挑んでたら途中で見るのをやめてたかもしれませんね。

ところが、だ。

そんな私の疲弊感を根こそぎひっくり返してくるのが後半の展開でして。

キャッチフレーズの「この映画は二度始まる」は、実に上手く言ったもので。

そっちの方向に物語を進めていくのか、とびっくり。

詳しく書くとネタバレになっちゃうので何も言えないんですが、これってある種のメタフィクションである、という捉え方も可能かと思います。

特に唸らされたのは、私が前半の30分で感じた作品の不手際の数々が、すべて意味を持つものであったこと。

「そういうことだったのか!」といちいち膝を打つ仕掛けになってるんですよね。

でね、不思議なことに見進めていくにつれ、だんだん登場人物たちを応援したくなってきちゃうんですよ、この映画。

がんばれ!無茶ぶりに負けるな!あともう少し!大丈夫!まだなんとかなってる!one cut of the deadは成立してる!みたいな。

エンディングなんて思わぬ感動で胸がいっぱい。

なんで俺、感動してんだ?と激しく訝りつつも、良かったね、よく頑張ったね、と、なりふり構わぬ努力をねぎらいたい想いで気づいたら涙目ですよ。

集団で何かを成し遂げようとしたことのある人、もしくはそういう現場に置かれている人にとってはひどく共感してしまう作品でしょうね。

ゾンビ映画どころか、およそ情熱大陸とかプロジェクトXあたりに近い、と言っていいかもしれません。

もちろんそこにあるのは「決して大仕事なわけじゃない」という現実であって、だからこそ多くの人の気持ちに訴えかけるものがあったんでしょうけど。

この内容をコメディの体裁で料理したセンスもいいと思いますね。

王道ながら喜劇の鉄板パターンをきちんと踏襲してる。

決して突飛なアイディアであるとか、斬新だというわけではないと思うんですが、こういう形で観客を揺さぶることもできるのだ、と提示してみせた監督の手腕は称賛されてしかるべき。

見て損はなし、侮れぬ快作じゃないでしょうか。

前半の30分程が壮大な伏線になってることを見破れなかった時点で、なんかもう全部してやられた気分になった私です。

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