1971年初出 望月三起也
大都社 上、下
マンモス団地に越してきた未亡人に惑わされる住人たちのデタラメな大騒ぎを描いたホームコメディ。
作者にしては珍しく警察も犯罪者も登場しない非アクション系の作品です。
どうも望月三起也は、すっとぼけてる純真なグラマーがお好きなようですが、正直なところ序盤から中盤ぐらいまでストーリーが上手に転がってない印象は受けましたね。
こういうのは柳沢きみおあたりにやらせた方がずっとそつなく料理しそうな気もします。
で、何が失敗してるか?って、この設定だとラブコメにしかしようがないのに、上巻終了間際ぐらいまでそれに気づいてないこと。
まごついてるというか、余計な方向に寄り道ばっかりしてるというか。
まあ、そもそもが望月先生にラブコメを求める方が無茶ぶりすぎる、って話なんでしょうけど。
時代も時代ですし、ラブコメ的なアプローチ自体が青年誌で確立してなかった、と解釈するべきかもしれませんが。
似たようなやり口での成功例が後年に発表されたoh!刑事パイ(1977~)でしょうね。
同じようなキャラを主人公に据えてはいるんですが、それを警察に放り込むか団地に放り込むかで全く面白さが変わってくる、という。
oh!刑事パイの場合、国家権力と調子っぱずれな婦人警官、という構図が笑えたわけですが、そう考えるなら本作、主人公アイちゃんに何を対比させ、ギャップとするのか、明確でないのがよくない、ということかもしれません。
失敗作でしょうね。
熱心なファン向き。
そりゃやっぱり望月三起也に家族ドラマは無理だって、と変に納得してしまった1冊。