ヘイル、シーザー

アメリカ 2016
監督、脚本 コーエン兄弟

ヘイル、シーザー

1950年代のハリウッドにおける映画製作の内幕を描いたコメディ。

この映画を見るにあたってまず必須なのは、当時のハリウッドであり、しいてはアメリカ社会がどんな風だったのか、予備知識として知っておくことでしょうね。

そこが曖昧だとコーエン兄弟が何を仕掛けてきてるのか、どう笑わせようとしてるのか、かなりの割合で理解できないままスルーしてしまうことだろうと思われます。

実際私もあとから色々調べて「あの場面にはそういう意味があったのか!」と知りえたこと多数。

なのでぶっちゃけ日本人向きではないかもしれません。

そりゃ博覧強記で勤勉な方も大勢いらっしゃるんで、この程度のことは常識としてみんな知ってるだろう?というご意見もきっとあるんでしょうが、そこはね、1950年代の戦後焼け野原な日本をアメリカ人はどれぐらい詳しく知ってるんだ?ってのと同じ話で、一般的にはやはりハードル高いですよね。

そもそもコーエン兄弟自身がワールドワイドな視点で撮ってない、と思うんですよ。

国内のお好きな方たちに喜んでもらえれば、みたいな按配でして。

映画愛に溢れた作品、と言えば聞こえはいいですが、まあどうしたって題材そのものは熱心な映画ファン以外にとってニッチですよね。

またサスペンス仕立てではあるものの、ストーリー進行が謎解き目指してまっしぐら、って感じじゃなく、あちこちに寄り道しまくって断片的なシーンを積み重ねていく形ですんで、どうしたって集中力がそがれる、ってのもある。

もちろん随所で笑えたりはするんですよ。

スカーレット・ヨハンソンをこんな役回りで使うのかよ!とか、 オールデン・エアエンライクの見事な恣意的大根役者ぶりとか、海兵隊が歌って踊るシーンが本格的過ぎて逆に吹き出してしまったりとか。

けど、全部が点なんですよね。

線になってエンディングへとつながっていかない。

どこか趣味的だ、と言ってもいいのかもしれません。

これだけの豪華キャストを集めておいて趣味的、ってのもすごい話ではあるんですが。

まあ、コーエン兄弟らしい、といえばらしいのかもしれません。

個人的には常連ジョージー・クルーニーがバカで情けないスター役で出演してるのがツボにはまったりはしました。

あと、笑わせるためだけに予算ぶちこんで潜水艦のシーンまで撮っちゃうのかよ!って、ほんと呆れた。

もちろんいい意味で。

ここ10年ほどの発表作と比較するなら佳作の部類かとは思いますが、監督のファンなら楽しめるんじゃないでしょうかね。

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