アメリカ 2018
監督 クリント・イーストウッド
脚本 ドロシー・ブリスカル
2015年、フランスの高速鉄道で発生した銃乱射テロ事件を題材に、その凶行を阻止したアメリカ人青年3人の英雄的行為を映画化した実話もの。
3人の主人公及び、乗客の多くを事件に遭遇した実在の人物でキャスティングしたことが話題になりましたが、さてこれがねー、どうなんだろうと。
思ってた以上にみなさん演技巧者で、いわれなきゃわかんないレベルだよなあ、と感心させられはしたんですが、自然体であることと、華がないことがイーブンな状態ですんで、結果「なんとも地味に映る」ってのは否定できないようにも思うんですね。
おそらくイーストウッドは極力作為的な作り込みや演出をしたくなかったんでしょうが、それがリアリズムの喚起へと直結してるか?というと微妙。
もうね、恐ろしく淡々としてるんです。
ドキュメンタリーでももうちょっと盛り上がるんじゃねえか?ってなぐらい。
というか、別にドキュメンタリーで良かったんじゃないのか?って言いたくなるぐらい。
もちろんプロの仕事です。
それは間違いない。
でもプロのテクニックをもってしてもどうにもならない部分を、最初の段階で「それで良し」としてるものだから、どうしてもインディーズ臭というか、低予算映画臭が思いもよらぬ場面で漂ってきたりするんですよね。
ちゃんとしてるのに素人映画っぽさがある、というか。
また、一番肝心なテロ阻止のシーンまでがとにかく長くて。
94分の映画なのに、主人公3人の子供時代から順を追って描いていく、なんてことをやってるものだから、とにかくまどろっこしい。
ようやく列車に乗り込んだのが80分ぐらい経過してからですしね。
クライマックスのシークエンスなんてわずか5分ほど。
なのに、どうでもいい主人公たちのヨーロッパ観光を描くことに30分以上割いてたりするというアンバランスぶり。
多分確信犯でやってるんでしょうし、シナリオ構成をどうこう言ったところで意味がないんでしょうが、それにしてもね、あまりに事実に忠実すぎやしませんか、と。
きっともう嫌なんでしょうね、イーストウッドは。
エンターティメントよろしく、わかりやすくドラマを盛り上げるのが。
名も知れぬ市井の人々の知られざる勇気を映画にできればきっとそれで満足なんだと思います。
一言で言うなら枯山水。
テロリストと対決する映画なのに、もはやわびさびの領域。
ハリウッド流のド派手さを期待したら大きくしっぺ返しをくらうと思います。
イーストウッド87歳、もはや明鏡止水の心境でメガホンを握りつづけているのか。
いや、知らないですけど。
余談ですが、もしこの作品がどこまでも実際にあったことに忠実に作られているのだとしたら、英雄的行為も結果論だなあ、と私は思ったりしました。
見てもらえればわかると思うんですが、凶弾に倒れてても全然不思議じゃないです、3人。
あえてそう見えるように撮ったのかどうか、真意は計りかねるんですけどね。