アメリカ 2018
監督 フランシス・ローレンス
原作 ジェイソン・マシューズ
ロシアのスパイ養成機関「スパロー」に育てあげられた女スパイの暗躍を描くサスペンス。
昨今、大流行りなスパイものですが、この作品の切り口が面白いのはロシアを舞台に、ロシアのスパイを描いてる点でしょうね。
やっぱりアメリカやイギリスの諜報部員とかだと、映画の世界じゃほぼやり尽くされちゃってて、もはやなんでもありな状態ですしね。
社会主義国家のスパイに着目したのはなかなかいいと思う。
中国なんかもそうですけど、共産党の一党支配が続く国って、情報が氾濫する現在においてすら、本当のところはどうなってるか、よくわからない部分があるじゃないですか。
だから多少の荒唐無稽さ、突飛な設定ですら、かの国ならやりかねんな・・とつい信じ込んでしまいそうになる。
ましてや原作は33年間CIAで工作員を努めたジェイソン・マシューズ。
俄然、信憑性も高まってこようというもの。
そりゃね、元バレリーナの女工作員、ってのは相当無理がある、と私も思いますよ。
そこはさすがにスパイ・エンターティメントとはいえ、突飛すぎる気がしなくもない。
またこのバレリーナ、いきなり諜報戦の世界に放り込まれたというのに、やたら機転が利くし、おそろしく頭もまわるんですよ。
そんなプロはだしなバレリーナは絶対居ねえだろう、と。
あと、アメリカ目線で、自国にこそ正義があるとばかり、ロシアの体制を悪し様に描写してるのも少しひっかかった。
けどね、それら全部をマイナス材料と加味してすら、2時間20分の長丁場に途切れぬ緊張感があったりするんですよね、これが。
スパイたちの本当の目的はなんなのか、本心はどこにあるのか、丁々発止な駆け引きを演出するのが妙にうまいんです。
クセものな演技巧者、ジョエル・エドガートンを手玉に取ってるようにすら見える主人公ドミニカのキャラ立てが実に秀逸なんですよね。
ドミニカ演じるジェニファーの役作り、存在感ももちろんあってのことなんでしょうけど。
派手なアクションとかほぼないのに、ここまで見せきる監督の力量はたいしたものだと思いますね。
ラストにあっ、といわせるどんでん返しが待ち受けてるのもいい。
ただまあ、丁寧な作劇を心がけているようでありながら、なんでそうなった?えっ、ちょっとまて、腑に落ちん、と思わず考え込んでしまうややこしさが若干あるんでね、ひょっとしたら見る人によっては好き嫌いがわかれるかもしれません。
私はキングスマンあたりに比べりゃ上出来だと思いますけどね。
本格派、呼んでいい一作じゃないでしょうか。
見応えがあることは保証します。