かいじゅうたちのいるところ

アメリカ 2009
監督 スパイク・ジョーンズ
原作 モーリス・センダック

かいじゅうたちのいるところ

欧米においては知らない人が居ない、と言われるほど有名な絵本を映画化した作品。

私は原作を手にとったことがないので、なにがどう子供たちをひきつけてやまないのかさっぱりわからんのですが、聞いたところによると文章はほんのわずか、むしろ独特な絵柄の方にこそ魅力がある一冊とレビューされていたりもしまして。

それを鵜呑みにするわけじゃないんですが、そう言われると納得できることがいくつかあったり。

なんだかね、この映画って、ストーリーがあるんだかないんだかよくわからないんですよね。

母親とケンカした子供が放置されてる船に乗ったらかいじゅう?(ジャケ写参照)だらけの島にたどり着いて、かいじゅうたちとあれこれすったもんだするんですけどね、しばらく過ごした挙げ句にじゃあやっぱり帰るねバイバイ、で唐突におしまいなんですよね。

だから何?としか言いようがない。

冒険譚といえば冒険譚なんでしょうけど、冒険が主人公の少年にとってなんの意味も成してないんです。

かいじゅうたちから何かを学んだ様子もないし、母子の関係に新たな局面を見出したわけでもない。

含むものもなけりゃ、暗喩するものもない。

そりゃね、少年が島で王様を詐称したことによって巻き起こる様々なトラブルが、なにかと意味深だったりはしますよ、けどね、劇中でのすべての出来事がエンディングにおいて帰結しないんです。

島のことは島のこと、お家はお家、って感じで完全に断絶してる。

もうこれ、夢見てました、でも別にかまわないレベルなんじゃないかと。

で、なんでそんな事になってるのか、というと絵本の世界を膨らませただけで、一切の補足を放棄してるからなんじゃないか?と私は思ったりするんですね。

やっぱりこの手のプロットを形にしたいなら、まずはファンタジーとして成立させなきゃならないわけで。

かいじゅうしか住んでない島を現実と隣り合わせに描くなら、それはどういう島で、かいじゅうはどんな生き物で、どうすればたどり着けて、村の社会性はどうなってるのか、ある程度の枠組みを作ってもらわないとなにもかもが曖昧すぎてとっかかりすら見つからないですしね。

これじゃあホームシックに陥った少年を描いただけ、と揶揄されても全く否定できない。

着ぐるみにCGで表情を貼り付けたりとか、映像は凝ってると思うんですが、それだけで終わっちゃってますね、この映画。

うーん、どうしたスパイク・ジョーンズ。

原作を映像化するにあたって、ものすごく早い段階で間違った方向に進んじゃった作品、って印象ですね。

残念、失敗作だと思います。

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