フランス/ベルギー 2016
監督 ローラ・ドワイヨン
脚本 ローラ・ドワイヨン、アン・ペレーニュ
わずか13歳の少女ファニーをリーダーとして、ナチスドイツ占領下のフランスからスイスへの、子供たちだけの逃避行を描いた実話もの。
いやもう、マジか?って感じですよね。
なにがって、これが実話をもとに制作されてる、ってことが。
エンドロールですでに老婆となった主人公ファニーのカットが挟み込まれるんですけどね、ほんとよく生き延びれたことだよなあ、とつくづく驚かされます。
だってね、いちばん小さい子なんて幼稚園の年長さんぐらいの歳なんですよ。
それがファニーを最年長として全部で9人もいるわけです。
大人だって持て余しますよ、子供が9人も居たら。
しかも追手はユダヤ人狩りに躍起になるドイツ軍。
普通に考えて無理。
どう考えたって無理。
けれどファニーは小さな偶然や道行きに出会う大人たちの親切に助けられて、地図もないのに強固な包囲網を突破していくんですよね。
ぶっちゃけ作品そのものは、どちらかといえば淡白な仕上がりです。
もうちょっと演出過剰でも良かったんじゃないか、と思う。
子役も演技巧者というわけではなかったですしね。
けれど、実際にスイスまで行った、と言う史実がね、作品の善し悪しを凌駕して画面から目を離せなくさせるんですよね。
わかっていても手のひらにじっとりと汗、ああ、実話の持つ力だよなあ、これ、と。
素晴らしかったのはエンディング。
ファニーと同道していたが捕縛された青年、エリーの渡した手紙が最後の最後にあんなシーンを導くだなんて、予想すらしていませんでした。
多分そこは創作だろうと思うんですけどね、あの絵をラストに用意してた監督のセンスに脱帽ですね。
軽く鳥肌が立ちました。
たった96分で描ききれる内容じゃないですね。
多分、尺に収めるために駆け足になってしまった部分もあると思うんで、許されるならばドラマシリーズでじっくり2クールぐらいやってほしいものですね。
いささかこじんまりとまとまってしまった印象は拭えませんが、見て損はない秀作だと思います。
ナチス占領下において、ユダヤ人の子供たちを匿うフランスの地下組織に属する大人たちの蛮勇にも私は胸打たれました。