みくまりの谷深

2017年初出 小川幸辰
エンターブレインHARTAコミックス 全2巻

山間部の集落に伝わる民間伝承を題材に、人でありながら人類とは異なる種の存在を描いた伝奇SF。

至極簡略化して言ってしまうなら「各地に伝わる河童伝説はマジだった!」みたいなお話なんですが、そこは小川幸辰ですんでもっともらしさを構築するための外堀固めは実に入念です。

さぞや各種文献を調べたおしたんだろうなあ、ってのが如実に伝わってくる。

本当になにか居るのかもしれない・・・と読者を巧みに非現実へ誘導する語り口は健在ですね。

本作、「エンブリヲの精神的な続編を」と編集部から依頼され、書き下ろされた作品らしいんですが、実際のところ共通するのはせいぜい「共生」がテーマになってること、ぐらいですかね。

そう言われればテイストは似てるかも、と言った程度。

ぶっちゃけエンブリヲほど壮大でも深淵でもありません。

やはりネックになってるのは物語後半のストーリー進行でしょうね。

部族間全面対決みたいな方向に行っちゃうとね、どうしたってハイ・ファンタジー色が濃くなってしまうわけで。

この漫画を手に取る人は、多分誰もアクションとかバトルとか期待してない、と思うんですよね。

そこを読み違えてる。

ゆえに物語の着地点もどこか尻すぼみ気味。

呈示すべきは、亜種にどう救いをもたらすのか?であって、争いの結末がどうだったか、じゃないんですよね。

あと、私が気になったのは女の子のキャラがやたら今風にキラキラした感じの作画になってること。

これ、個人的にはかなりキツイです。

タッチが女の子のキャラだけまるで別物なんですよね。

うーん、昔は尾瀬あきらだったのになあ。

1巻の展開はオカルトじみた薄気味悪さもあって惹かれるものがあったんですが、2巻で思ってたのと違う方向にいっちゃって急速に冷めた、というのが正直な感想でしょうか。

もう商業誌で連載することはないんだろうなあ、と思ってただけに、新作が読めたことを喜ぶべきなのかもしれませんが、悲しいかな旬は過ぎた、という気がしなくもありません。

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