ドイツ/オーストリア 2016
監督、脚本 クリス・クラウス
ラジカルで無鉄砲な既婚中年男と、エキセントリックでぶっ飛んだ女子学生の奇妙な恋を描いた作品。
まあ、なんと言えばいいのかよくわからん作品ではありましたね。
物語の背景にあるものは結構なレベルで深刻です。
主人公の男性は祖父がナチであったがゆえにホロコーストの研究に生涯を捧げてる立場ですし、ヒロインの女性は反して祖母がナチに殺された過去を持つ。
そんな救われない生い立ちを乗り越えて2人に芽生える恋心を、コメディ・タッチで描写してるんですけど、なんというか物語の枝が異様に生い茂りすぎててね、どこに焦点をあわせていいのかわからなくなる感じなんですよね。
まず、この2人ね、大前提として不倫なんですよね。
もし「過去に対する贖罪」であり「許し」をテーマにしたいのであれば不倫である必要なんて全然ないわけで。
男が身体的事情を抱えている、という設定から暗示するものを嗅ぎ取れなくもないんですが、それだとエンディングがいささか解せなかったりもしますし。
さらにはヒロインが笑って済ませられないレベルで情緒不安定だったりしまして。
これね、現実にこんな女性がいたら恋する以前に診察受けたほうがいいです。
確実に病んでます。
オッサンと道ならぬ恋に流されてる場合じゃない。
場面場面を切り取るなら、二人の噛み合わなさや突拍子のなさが面白かったりはするんですよ。
計算づくの迷走を構築するシナリオもよくできてると思う。
サブキャラも曲者だらけで笑えますしね。
けど、いざ終わってみると、だから結局なんだったの?という座りの悪さしか後味として残らない。
どうなんでしょうね、あえてコメディ調にした意図はよくわかるんですが、むしろシリアスに攻めたほうが良かったんじゃないか、と私は思ったりしますね。
もしくはもっとデタラメに突き抜けてしまうとかね。
ヒロインを演じたアデル・エネルはキャラクターが乗り移ったかのような好演で素晴らしかったと思うんですが、私にとっては「とらえどころのない映画」の一言でしたね。
うーん、読み解けてないのかもしれませんが、若い女に振り回されて大変なことになった中年男の悲喜劇としか映らなかった、ってのが正直な感想ですかね。