カナダ 2017
監督、脚本 カロリーヌ・ラブレシュ、スティーヴ・レオナール
半径15メートル以内に侵入した生物と言う生物をすべて即死させてしまう男を描いたSF。
ただし、虫とか微生物はどうなのかわかりません。
作中で言及されてないもので。
けど、犬猫は言うに及ばず、鳩とか烏とか男が近づいただけでバタバタ悶死します。
もちろん人間も数分を待たずに昇天。
なぜ生物が死んでしまうのか全くわからない、目に見える何かが作用してるというわけでもない。
ただ事実として、不作為に命を奪い続けてしまう主人公。
いやもうね、なんじゃそりゃ?って感じでしょ?
よくまあこんな設定、思いついたものだな、と。
プロットの奇抜さだけでも充分に見る価値ありですよね、これ。
だってね、主人公に近づくものがみんな死んでしまう、ということは、そこから一切物語が広がりようがない、ということも同時に意味してるわけで。
これ、一体どうするつもりなんだ、とドキドキしながら見てたんですが、さすがに一人芝居には限界があることを監督は予測してか、ただ一人だけ近づいても死なないヒロインを中盤にて投入。
どうやらヒロインと主人公はどこかで接点を持っていたよう。
しかし二人揃って、主人公が「自動殺戮兵器」に変貌したあたりからの記憶がないんで、何故彼女だけが生きていられるのかがさっぱりわからない。
そうこうしているうちに警察は主人公を重要参考人として手配。
否応なく、二人の逃避行が始まる。
逃げ惑う内に、少しづつ蘇ってくる二人の記憶。
全く先が読めません。
どう転ぶのか、どう落とすつもりなのか、まるで予測できぬまま惨劇は繰り返され、ひたすら謎は深まっていくばかり。
そして迎えたエンディング。
もうね、私は思わず膝を打った。
そんなオチを用意してたのか!と唸らされましたね。
さて、冒頭で、私はこの作品のことをSFと書きましたが、これ厳密に言うとSF的な味付けで料理したサスペンスです。
なんだかんだ言って「超常的な現象であるとか未知の力が云々で適当にごまかされてしまうのかな?」と思いきや、監督は見事、現実的かつ衝撃の事実でもってストーリーを結んでみせた。
これ、途中でわかったって人、絶対居ないと思います。
ラストシーンがいささかあっけなかったのが残念といえば残念ですが、ここまでやってくれたら文句なしですね。
思わぬ拾い物的秀作だと思います。
シナリオの勝利でしょうね。
演出や映像表現がもっと磨かれてきたら、この2人組の監督は凄いもの撮りそうですね。
おすすめです、見て損なし。