ハネムーン・キラーズ

ハネムーン・キラーズ

アメリカ 1970
監督、脚本 レナード・カッスル

アメリカ犯罪史上にその名を残す、レイ&マーサの殺人鬼カップルをモデルとして制作された実話ものサイコ・サスペンス。

カルト的人気を得て、これまでタイトルを変え3度リメイクされてます。

いちばん有名なのはジョン・トラボルタが刑事役で出演したロンリーハート(2006)でしょうかね。

私は未見なんですけど。

余談ですがヌーヴェル・バーグの旗手、フランソワ・トリュフォーは「私の知る限り最も美しい愛の物語」とこの作品を絶賛したんだとか。

最後まで見て、なるほどなあ、と少し頷いたり。

ちなみに監督は本業がオペラ作曲家らしく、監督作はこれ1本だけ。

ゆえにレア度が増した、というのはあるでしょうね。

なんせ独立プロ系の作品ですし、モノクロで低予算、門外漢の初監督作ということもあって、決して安定した出来とは言えないですし、どこかヨーロッパの映画にも似た淡々とした描写がなんだか盛り上がらない感じではあるんですが、なんと言ってもマーサ役であるシャーリー・ストーラーの存在感、これが強烈なインパクトを残してるのは誰もが認めるところでしょうね。

森三中か、はたまた地味な渡辺直美か、ってな容姿で結婚詐欺師に入れあげる女を熱演。

挙げ句、男のために殺人すら厭わなくなる展開には、ミザリー(1990)のキャシー・ベイツを彷彿させるものがあったりも。

私が興味深かったのは、いわゆるダメ男とばかりつきあってしまう女とはマーサが微妙に違うタイプであることですかね。

ただただ尽くすタイプ、ってわけじゃないんです。

自分にもっと注目してほしい、愛を注いでほしい、けれど男の稼業はうまくいってほしい、というジェラシーやら保護欲やら色んな感情がないまぜになった末の転落だったりするんですね。

で、なんとも奇妙なのは、結婚詐欺師であるレイが、女なんざよりどりみどりなはずなのに、そんなマーサを深く愛している様子であること。

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これね、スラッと美人さんで全身のケアにとんでもない金額をつぎ込んでる昨今のハリウッド女優がマーサ役じゃ絶対にこの異質さは演出出来なかったと思います。

美女が詐欺師の片棒担いで不幸な女を騙し共謀殺人じゃ、ゴシップ記事にしかなりませんから。

そういう意味では監督、キャスティングに慧眼が光っていたかもしれませんね。

ポッチャリ女芸人かよ!ってな塩梅のシャーリーだったからこそ、レイの本気度、真剣さがわかるといいますか。

女は稼ぎの対象としか見ていないレイが、なぜかマーサにだけは惹かれていることが「深い内面の結びつき」という形で観客に伝わってくる。

そこに奸計や雑駁さはない。

ゆえに二人の愛の独善性、その狂気がより鮮明となってくる。

エンディング、予想外にドラマチックだったりします。

マーサ、もう完全に道を踏み外しててどうしようもないのは確かですし、レイがクズなのもまちがいないんですが、どういうわけかラストシーン、育まれた愛情の形だけがすべてを差し置いて燦然と周りの人々をまぶしく照らしていたりするんですよね。

歪んだ愛を描いた秀作じゃないでしょうか。

高い完成度を誇る、ってわけじゃないとは思うんですが、見た人の気持ちに爪痕を残す、そんな一作でしたね。

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