アメリカ 2017
監督 デヴィッド・リーチ
原作 アンソニー・ジョンストン/サム・ハート
2012年に発表された北米のグラフィック・ノベル「The Coldest City」を映画化した作品。
簡単に言っちゃうなら昨今流行りのスパイもの、女主人公版、といったところでしょうか。
ベルリンの壁崩壊直前の1989年ドイツを舞台にしていることが独特といえば独特ですが、突出して目新しい何かがあるか?というとそうでもなく、相変わらずの裏切りだの、ダブルスパイだので、既視感を覚える内容だったりはします。
監督はきっと、おしゃれというかスタイリッシュな感じに仕上げたかったんでしょうけど、その手のこだわりがなにか良い効果をもたらしているか?というと微妙なところですね。
オープニングでとても女性とは思えない立派な背筋をアップで捉えたシーンは、語らぬ説得力があって期待させるものがあったんですよ。
けれどその後があんまりよろしくない。
青みがかった映像で雰囲気作りに腐心してるのはわかるんですが、陰りを帯びたトーンが静と動の落差を平滑に見せているような感触もあって。
せっかくのアクションがあんまり印象に残らないんですよね。
展開のまどろっこしさがスリルの軽減に拍車をかけてるようにも思えた。
台詞回しにあんまりセンスが感じられない、というのも減点ポイント。
結局、シャーリーズ・セロン無双、で気がついたら終わってたみたいな。
シナリオはしっかりしてる、と思うんです。
最後にあっ、と言わせるどんでん返しも用意されてましたし。
ただ、そこに至るまでのプロセスをどう見せるのか、と言った部分で、とにかくシャーリーズ・セロンを盛り立てていこうとする過剰なおもねり、配慮がスタイリッシュとは逆ベクトルに働いていたのでは?と私には感じられて。
一体、何度着替えたら気が済むんだよセロン!常に衣装ケースを持ち歩くスパイなのかよ!と、ツッコミたくなるほどファッショナブルなのはどうなんだろうと。
同性とのベッドシーンも完全に男性向けサービスで余録だと思いましたしね。
ま、早い話が噛み合ってないんですよね。
おしゃれな感じなスパイものにしたいのならセロンのスター映画みたいな指向性はもう少し抑えるべきだった、と思いますし、本格的なハードボイルドにしたかったのならセロン演じるローレン・ブロートンのキャラをもっときっちり作り込むべきだった。
どこか表層的、とういうのが結論ですかね。
聴聞室でタバコをくゆらせるセロンとか、問答無用でかっこいいと思えるだけに、彼女を上手に使いこなせてないのがただただ残念でしたね。
体を張った彼女の演技は賞賛に値する、とは思うんですが、それ以外にとりたてて記憶に残るものがない、というのが正直な感想でしょうか。