アメリカ/カナダ 2017
監督 ディーン・イズラライト
脚本 ジョン・ゲイティンズ
日本ではおなじみの「戦隊ヒーローもの」をローカライズしたアメリカのテレビドラマ、パワーレンジャーの劇場映画版。
ちょっとややこしいんですが、東映の手がける子供向け特撮シリーズを改変してアメリカで映画化した、ってわけじゃないんですね。
まずは東映の企画をベースにしたアメリカ版のドラマシリーズが存在してて。
そのドラマの第1シーズンを映画化したのが本作のよう。
テレビドラマシリーズ「パワーレンジャー」はアメリカで最も成功した日本製のコンテンテンツ、と言われてますが、今回初めて最後まで見てみて、ま、意外と言えば意外だったりもしましたね。
というのもですね、驚くほど日本版の戦隊ヒーローものを忠実に踏襲してるから、なんですね。
国産ものとの大きな違いが見いだせない。
5人の仲間の絆でもって悪に立ち向かう、という鉄板の構図がアメリカでも子供達に支持されるというのがなんとも興味深かったり。
努力と友情、そして手にする勝利、は世界の共通言語だったか、と。
少年ジャンプ、アメリカで発売したら予想外に売れるんじゃねえか、なんて思ったりも。
なんせ戦隊ヒーローもの、日本じゃ40年近くに渡って連綿と放映され続けてますから、知らない人はほぼ居ないでしょうし、日本人がこの作品を見て意外性、目新しさを感じることってまずないんじゃないか?とは思うんですが、やっぱりね、何が違うって、そりゃもう金のかけ方が違うわけで。
制作費1億2千万ドルで戦隊ものやられた日にゃあ、たとえ大人であろうとも、そのアクションやCGの出来栄えには目を見張る、ってなもの。
特に終盤のお約束な展開、巨大ロボ大激突のシーンなんて、凄え、の一言。
まあ、トランスフォーマーとかパシフィック・リムとか類する作品は色々ありますけど、あのレベルでね、町をぶっ壊しながら巨人の肉弾戦を見せつけられちゃうと「これほんとに戦隊もので合ってる?」という気分にもなろうというもの。
お詳しい方がごらんになれば、日本のシリーズのほうが勝っている点を列挙できたりもするんでしょうけど、私はもうこりゃ本歌取りだ、と思いましたね。
オリジナルも消し飛ぶ迫力とはまさにこのこと。
また、子供向けなりにドラマがしっかりしてたりもするんで、単に派手なだけ、と揶揄できなかったりもしまして。
特に私が驚かされたのは、ブルーレンジャーが発達障害である、という設定。
これね、もし障害に悩む子供が見てたらこんなに勇気づけられるキャラって、ないと思いますね。
ブルーの行動がとても大きな意味を持つ形でストーリーが進行していくのも素晴らしい、と思いましたし。
なかなか日本じゃここまで吹っ切れないと思います。
少なくとも本気で、戦隊ものをアメリカなりに成立させてみせる、という矜持は感じられましたね。
話題先行で安直なリメイクに決してなっていない点は、評価されてしかるべきかと。
しかしまあ、なんと言いますか、愛がありますね。
制作側の誰だかわかりませんけど、ほんとに戦隊ものが好きなんだろうなあ、と。
荒唐無稽で定番で慣れ親しんだいつものアレですけど、侮れない、そんな感触を得た一作でした。
124分、あっという間、でしたね。