アメリカ 2017
監督、脚本 エドガー・ライト
天才的なドライビングテクニックを買われて、強盗団の逃がし屋として悪事に手を染める主人公ベイビーの恋路の行方を描いた作品。
あらすじだけ追ってるとドライヴ(2011)みたいな感じなのかな?と先入観を抱きがちですし、事実似てないとは言えないんですが、実際に見てみると主人公の年齢の違いがまるで別物な感触を抱かせます。
物語の骨組みだけに注視するなら酷似してるんですけどね。
ドライヴが報われない大人の恋を切々と描写しているのに対し、こちらは青年の初々しい恋。
どっちかというと青春映画、と言ったほうがいいかもしれない。
強盗団とか、逃がし屋とかは恋につきものな障害、と捉えて見たほうが物語にすんなり入っていけるかも。
で、この映画が何に最も比重を置くべきであったかというと、ヒロイン、デボラとベイビーの恋模様に他ならないわけでして。
ベイビーはデボラの何に惹かれて強盗団から距離を置こうとしたのか、そこを説得力たっぷりに描いてこそ終盤の展開も活きてくる、ってなもので。
私がいささか疑問だったのは、デボラの内面があまり掘り下げて描かれてないこと。
なんとなく仲良くなって、なんとなくそのまま二人で逃避行じゃあね、見てる側はやっぱり感情移入しにくいですよね。
ベイビーにはベイビーの覚悟、デボラにはデボラの覚悟があるってことを、「恋に落ちたから」という単純明快な理由以上の語りかけでもって訴えてくれないと、昨日今日知り合った相手のためにそこまでやるか?という疑問しか湧いてこない。
スクールボーイの恋愛じゃないんですし。
クライムアクションに中途半端な色気を見せていることもあんまりよくない。
強盗団の打ち合わせとか内紛とかに尺を割く必要なんて全然なくて。
それならカーチェイスをもっとふんだんに盛り込んでくれたほうがよっぽど小気味よい。
何を撮るべきなのか、シナリオ構成のバランスがあんまりよくないんですよね。
あれもこれもと詰め込むんじゃなくて、一点集中で「ちょっとしたアクションもあるラブロマンス」にするべきだったんです、この映画は。
物語に贅肉をつけすぎな割には肝心なところがおろそかになってる、というのが率直な感想。
話題になった音楽とシンクロする映像も、私には、え?普通にミュージックビデオの手法だよね?としか映らなくて。
決して悪くはないんです。
それなりにメリハリもありますし。
けれど記憶には残らない。
そんな一作でしたね。
今のところこの作品がケビン・スペイシーの最後の出演映画になりそうな気配も濃厚なんで、そういう意味では貴重?かもしれませんが。