セブンブリッジ

1986年初版 板橋しゅうほう
潮出版社希望コミックス 全7巻

あまりにも漫画好きの口の端にのぼることが少なくて悲しい限りなんですが、80年代のSFファンタジー、冒険SFの中でも確実に3本の指に数えられる傑作、と私が確信しているのがこの一作。

なぜ板橋しゅうほうがそれほどメジャーになることもなくマニア受けする漫画家で消えていってしまったのか、つくづく理解できない、といまだに思います。

アメコミの影響の強い、クセのある絵柄に好き嫌いが別れたのかもしれませんが、やってることは同じくアメコミの影響下にある寺沢武一と同等か、それ以上のレベル。

よりSF的なアプローチに近接したことが敷居を高くしたのかもしれませんが、コブラがいけるならこれもいけるだろう!と、私なんかはどうしても思っちゃうんですよね。

やはりなんといっても圧倒的なのは、どんでん返しに次ぐどんでん返しが鮮やかな練られたストーリーテリング。

こと長編に限って言えば、一筋縄でいかない作品ばかり。

予断を許さぬ、予想を覆す、とはまさにこのこと。

独特の造形感覚、奇抜なデザイン性、まだ見ぬ世界を構築するイマジネーションの豊かさも他の追随を許さない。

本作で描かれているのは、さしずめ「白雪姫と7人の小人のSFファンタジー版」といった趣なんですが、一体誰がグリム童話をこんな風に改変できてしまうというのか、って話で。

その革新性、奔放度は、それがモチーフとなっている、と言い切ってしまうことすらしらじらしく感じられるほど。

初読時、ラストシーンは衝撃的でしたね。

今でこそ似たオチはあちこちで流用されてますけど、当時は「これもう本気でSFじゃないか!」と震えました。

この作品を、広く知られることなくマンガ史の闇に埋もれさせてしまうのはあまりにもったいない。

発表から約30年の時間を経て、初めて読む人がどういう感想を得るのか全く予測はつきませんが、もしあなたが不思議の国のアリスが好きで想像力を刺激されるのが大好きなら、ぜひ一度目を通して欲しい、と思うシリーズですね。

SFマインドの豊潤さに酔える一作。

個人的には漫画史に名を残す大作、と推す次第。

余談ですが、これを「夢オチ」とか言ってる人は全くわかってないので気にしなくていいと思います。

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