君の名は

君の名は

日本 2016
監督、脚本 新海誠

アニメ映画を見たのは、それこそ「千と千尋の神隠し」以来ぐらいなんじゃないか?っていうぐらい久ぶりの体験だったんで、見当ハズレなことを書き連ねそうな気がしなくもないんですが、まあ、私なりに感じたことを少し。

やってることは時間SFの意匠を借りたラブロマンスだと思うんですよ。

時間SFというとちょっと大仰すぎるかもしれないんで、そこは「もつれた時間を題材としたすれ違いの物語」と言い換えてもいい。

プロットそのものにさほど新鮮味はない、と思うんです。

想いをつのらせても、同じ時間軸を生きていないがゆえ出会えない、とした作劇は古くからあるものですし、日本じゃ梶尾真治(作家)が得意とする分野で、数多くの傑作を彼はこれまで上梓してきた。

そこを踏まえて、過去作を上回る、もしくは肉薄するものがあったか、というと、やはり厳しいものがあったように思うんです。

そもそも時間のズレが悲恋を演出する仕掛けとして「入れ替わり」を端緒とする、というのがよくわからないですし。

別にこれ、入れ替わる必要なんて全然ないんですよね。

3年前のヒロインの声を主人公、立花瀧に届けたいのなら、宮水三葉の存在を彼に認識させてやるだけでいいんです。

それこそ「夢」でもいいし「幻覚」でもいい。

夢で逢瀬を交わすことが事件の糸口となる、としたほうが、超常を描く上でよほどストーリーに入り込みやすい。

大林宣彦の転校生(1982)じゃないんだから、いきなり入れ替わられてもですね、そこに納得のいく解釈は導き出せないですよね。

つまりは、ご機嫌伺いなんです、前半の展開。

見知らぬ女子高生と入れ替わったりしたら楽しいでしょ?みたいな。

正直、そこで振り落とされかけた、というのはあった。

キャラの作り込みがどこか浮わついてるのも気になりましたし。

いかにもアニメというか、現実ばなれしてるというか、なんかね、見ててくすぐったくなってくるんですよね。

特に宮水家のばあちゃんのキャラなんて、完全に語り部役で、なんでお前は「初めての人のためのガイド音声」みたいな口ばっかりきくんだ、と辟易させられましたし。

事あるごとに挿入される歌もうざかったですし。

大人を相手にしてないんですよね、基本的に。

ラノベでいいじゃない、みたいな開き直りがある、というか。

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ただですね、そんな前半でのティーン向けなライト感覚も後半で俄然盛り返してきた、というのはあったと思うんです。

やっぱり新海監督はセカイ系で名を売っただけはあって、得体の知れない悲劇に女の子が襲われる演出にかけては他の追随を許さんよなあ、と感心。

また「引き」が上手い。

出会えそうで出会えない寸止めのリビドーをここまで巧みに見せつけるか、と。

そりゃね、なんかのれないなあ、と思っていても、何の確信もない夢のような出来事に、あそこまで必死になる二人を見ていたら否が応にも感情移入しちゃいますよ、例えオッサンといえど。

失われていく記憶をたぐる物語、としたのも巧妙だったと思います。

すべては忘却の彼方へと消えていく「刹那の恋」だったからこそ、徒労を繰り返すことがひどく愛おしく映るわけで。

なんかね、監督のテクニックにしてやられた気分ですね。

これを傑作とは言いたくないです。

ですが、最後まで見て「ああ、よかったね」と思ったし、畜生、言いたかないが、泣いてしまったよ私はくそったれ。

勝ち負けで言うなら負けましたね、完全に。

国民的アニメと言ってしまうことには異を唱えたいですが、だからといってこの作品をニヒリズムに寄りかかって「つまらん」と言い切ってしまえるほどスレちゃあいないつもり。

ああ、困った映画だ。

とりあえず、泣いたことはここだけの話にしといてくれ。

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