スプライト

2009年初出 石川優吾
小学館ビッグコミックス 1~3巻(全15巻)

作者の作品といえば「よいこ」ぐらいしか読んだことがなかったので、えっ?SF?と驚かされた、というのはありましたね。

特に1巻の展開ときたらSF好きの嗜好をくすぐるシーンだらけで。

「時間」が「黒い水」として視認できる状態で「津波」となってビルを襲う、という発想自体が凄いと思いましたし、なによりプロットそのものが実に漫画向きなことにも感心。

その結果ビルに閉じこめられた住人たちのサバイバルも予断を許さぬおもしろさがあって。

これははひょっとして21世紀の漂流教室になるのか、と期待は否が応にもふくらむ一方で。

ところがです。

そんな胸の高鳴りも2巻の終盤ぐらいで早くも霧散。

やっぱりね、未来人類との闘いみたいなことをやっちゃうとね、きっと既出の作品と似たような経緯を辿ってわかりやすいところに着地するんだろうなあ、と予測ができてしまうわけで。

いや、そりゃ断言できないですよ、15巻まで続いてることですしね、途中で驚きのどんでん返しとかあるかもしれないですしね。

でも、そこに至るまでの筋立てがね、最初のインパクトに比べるとあまりに意外性に欠けるように思えて仕方ないんですよね、私には。

あと、純粋で無垢である少女性を神聖視する演出は今時どうか、というのもあって。

とりあえず好子のような女子高生はこの世に生息していません。

SFであるからこそ余計にね、なんの妄想なんだよ、と思えるような話の膨らませ方はきわどい、と思うんです。

現実と地続きで飛躍していかないと、ファンタジーになっちゃいますから。

ま、好みの問題なのかもしれませんが、あえてSF風のファンタジーをこの作品に求める感覚は私の中にはないんで、3巻にて脱落。

スタートダッシュは見事だった、と思うんですが・・・。

私にとっては途中でズレてしまった作品、との位置付けですね。

最後まで読んだ人の総評が知りたい、と少し思ったりもしますが。

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