サラリーマン・バトル・ロワイアル

アメリカ/コロンビア 2016
監督 グレッグ・マクリーン
脚本 ジェームズ・ガン

サラリーマン・バトル・ロワイアル

これが秀逸なのかどうかは別として、邦題が内容のすべてを語ってますね。

仕事中、突然社屋の窓という窓、出入り口の全てにシャッターが降りる。

見知らぬ誰かのアナウンスが流れ出し「これから2時間以内に2人の同僚を殺せ。遂行されない場合、無差別に30人殺す」と告げられる。

なんのジョークだ?と顔を見合わせ鼻で笑う社員たちの目の前で、いきなり隣のモブキャラの頭が爆発。

理解不能の出来事に社内はパニック。

脱出は不可能、携帯は通じない、はたして主人公は生き延びることが出来るのか?というのが物語の大筋なんですが、これがケレン味たっぷりながら意外に悪くない。

ありがちな不条理スリラーであり、近作で言うならパージ(2013)あたりと質感は近いような気もしますが、舞台を「会社組織」としたところが目新しかったかと。

学生さんはともかくとして、社会に出て働いてる人にとっては「自分だったらどうするだろう」と、やはり考えると思うんですよ。

登場人物たちに自分を投影できてしまうんですよね。

しいてはそれが奇妙なシンパシーを産む。

生き延びるために、常識人が狂気にとらわれ壊れていく様子をじりじりと描くのも達者でしたし、ドラマ作りも巧み。

そのあたり、さすがはガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのジェームズ・ガンが製作と脚本で噛んでいるだけはあるな、と。

『なぜ屋上で携帯が通じないの?』とか、『脱出のアイディアを工夫、勘案しなさすぎ』とか、細かいところでつっこみたくなったりはするんですけどね、筋運びの上手さがもろもろのゆるさをも許容させてしまう。

いささか残念だったのは続編作る意欲満々のエンディングで、この一作だけですべての謎を解き明かそうとしてない点なんですが、それを差し引いてもコンパクトにまとまった秀作だと感じましたね。

たった90分でこれだけやれたら上等。

決して一級品、というわけじゃないとは思うんですが、もはや手垢にまみれたようなジャンルものを、違った切り口で味付けした手管は評価したい、と思いました。

ちなみに作中では、ギリギリまで主人公が殺し合いに手を染めることを良しとしないんですが、これ、私だったら簡単にモラルが崩壊して殺っちゃってるだろうな、と思いました。

なんせ会社だからねー、普段から対人関係でストレス抱えているわけで、2人ぐらいなら楽勝でチョイスできるぞ、うん、と。

すまん、ひでえやつだ、でも、割と本気だ、あれー。

誰かと一緒に見て、見終わった後に「私だったら」「俺だったら」と話し合うのも楽しいかもしれません。

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