南アフリカ/イギリス 2017
監督、脚本 ジョー・ミアーレ
謎の機械兵団に占領された世界で生き抜こうとする、記憶喪失の兵士と女医師を描いたSFアクション。
はっきり言ってプロットはありがちです。
ちょっと考えただけでも似たような作品は星の数ほど脳裏をよぎる。
ところがどうしてどうして、これがやたら面白かったりするんであたしゃほんと驚かされた。
オープニング、いきなりコントロールを失って旋回するヘリのスローモーション。
やがて墜落したかと思えばすぐさま場面は激しい交戦シーンに切り替わる。
次の瞬間、アップになるのは牢獄で目覚める兵士の姿。
「俺は誰だ」
「静かにして!敵がやってくる!」
叫んだのは隣に収監されている女医師。
牢獄の窓から見えるのは墜落していく飛行機らしきものの影。
遅れて響いてくる爆発音。
もうね、ここまでのシークエンスで私は画面に釘付けでした。
最初からエンジン全開、いっさい手綱を緩めることなく現在進行形で物語はひた走る。
何が起こってるのか見てる側は全然わかりません。
けれど、わからないまま兵士と女医師に導かれるようにステージは巨大な殺戮機械が闊歩する野外へ。
基本、倒せません。
ただもう逃げるしかない。
命がけの逃避行であり、決死のロードムービー。
救いがあるのかどうかもわからぬまま、2人は500キロ離れたアメリカ軍の基地を目指す。
なにこれ、ラジカルなモンスターズ/地球外生命体(2010)じゃないか、と手に汗を握る。
また、機械兵団のデザインが秀逸で。
コノハムシみたいな造形が薄気味悪さを増長。
そして終盤、ようやくこれは侵略SFだったのか、と気付かされて。
で、気づいたときには早くも物語は風呂敷をたたむ準備にとりかかってる。
終わってみれば、脇見をさせる暇もない怒涛の88分だったことに心底感心。
素晴らしかったのは、たった88分の間に物語のツボを心得た見せ場がいつくもあったこと。
特にエンディングでの布石の回収の仕方なんて、うますぎて声が漏れた。
名作ではないでしょう。
決して斬新ではないし、目新しさもない。
でも、プロットの料理の仕方のみに着眼するなら、こりゃ一流の仕事だと思います。
ジョー・ミアーレ、恐るべし。
今後の活躍に要注目ですね。
久々に拾い物な一作でしたね、これ。