湿地

アイスランド/デンマーク/ドイツ 2006
監督 バルタザール・コルマウクル
原作 アーナルデュル・インドリダソン

湿地

孤独な老人の殺害事件を追う、やさぐれた中年刑事を描いたミステリ。

彩度を落とし、ざらついた質感の寒々しい映像はいかにも北欧映画だなあ、って感じでしたね。

ひょっとしたら16ミリフィルムで撮ってるのかな、と思ったんですが調べた限りでは記述がなかったので自信はないです。

で、肝心の内容なんですが、ありふれた殺人事件が、その背後に隠されたものを芋づる式に白日のもとへとさらし、一見無関係に思える「30年前に死んだ少女の遺体の謎」にまで到達する前半の流れは、無条件で面白かった、と言っていいでしょう。

そりゃ検死官に「少女の遺体から脳が抜き取られてる」なんてセリフを吐かれた日にゃあ、何が起こってるんだこれ!と前のめりにもなりますよ。

登場人物が多い複雑な物語なのにダレることなく緊張感を維持できてるのもいい、と思いましたし、キャラクターの描き分け、立て方も上手でしたしね。

主演のイングヴァール・E・シーグルソンがまた演技巧者で。

不遜な刑事役が実にお似合いというか。

彼と、グレて身を持ち崩した娘とのやり取りが本筋をさておいて結構ドラマ性があったりもするんです。

事件を通して、刑事は自分と娘との関係性に何を見いだしたのか、最後にはリンクする展開もよくできてる。

いささか残念だったのは1にも2にも「謎解き」。

「脳がない」なんて、大風呂敷を広げておきながら、誰もが予測の範疇にある出来事を真相とし、潮目に逆らわぬままあっけなく犯人を明らかにするんですよね。

終わってみれば、30年前の事件にまで遡らなくても犯人特定できたんじゃないか?と思えてくる捻りのなさが、前半の不可解さにドキドキする気持ちをまるでないがしろにしちゃってた、とでもいいますか。

そこを責めるのは酷、という気もするんですけどね。

きっとこのオチって、原作由来のものでしょうし。

ミステリな映画作品としての構成、見せ方はしっかりしてた、と思いますし、破綻や矛盾もないんですが、肝心の真相がいまいち冴えない、そんな一作でしたね。

割りと好きなタイプの映画だけに惜しい、の一言ですね。

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