2007年初出 伊藤潤二
小学館ビッグコミックススペシャル
やっぱり伊藤潤二の長編はどこか冴えない、と改めて実感した一作。
アイディアは悪くない、と思うんです。
臨死体験を経て、死後の世界を行き来出来るようになった男が、あの世から持ち帰った石で世間の注目を集める、という序盤の滑り出しは後の展開を予想させないものがありましたしね。
あの世の石とは一体何なのか。
光り輝き、ダイヤより固く、刺激を与えると怪現象を起こし爆発する、というギミックはその正体に対する興味を嫌が応にも煽るものがあった。
普通なら石の存在、しいては死後の世界を解き明かしていくことがストーリーラインの核となるはずなんですよ、この筋立てなら。
多分、みんなそのつもりで読んでるはず。
ところが作者はなぜか死後の世界にダイブする人間を増やしていくことに執心、最終的には「石回収チーム」の立ち上げみたいなところにお話を誘導していくんですよね。
肝心の石の正体に至っては、余談とばかりに誰もが思いつくようなオチであっけなく片付けて、挙句に生と死の端境に存在するダイバー4人の姿をクローズアップすることで強引に話を結ぼうとしたりする。
6話で終わってますけどね、実質なにも終わってないです、この物語。
ひょっとして打ち切り?と疑ったりもしましたね、私は。
どうにも行き当たりばったりでシナリオを継ぎ足していった感が強い。
着地点が見定まらぬままあらぬ方向へ迷走して収まりがつかなくなったというか、第2部のオープニングをエンディングが兼ねてるみたい、というか。
うーん、失敗作でしょうね。
どうも伊藤潤二は大きなクライマックスにむけてじりじりと物語をひっぱっていく、ということが苦手なようです。
うずまきが唯一の成功例、という感想はやはり変わらず。
転換期にあるのかもしれないなあ、とちょっと思ったりもしましたね。