バーニング・オーシャン

アメリカ 2016
監督 ピーター・バーグ
原案 マシュー・サンド

2010年に起きた、メキシコ湾原油流出事故を映画化した実話もの。

ま、ぶっちゃけね、ドラマ自体は大したことないんですよ。

遅れている工期を一日でも取り戻して利益を確保しようとする、原油掘削事業本社から派遣された人間と現場の対立、安全テストを強引にやめさせたせいで起こった爆発事故、燃え盛る海洋ベース「ディープウォーターホライズン」からの命からがらな脱出劇、その全てが想像の範囲内というかね、事実をなぞっただけなんだろうなあ、という感じなんですね。

そりゃ安全度外視で儲けに走りゃあこうなるわ、と納得できただけ、というか。

そこに驚きの真相や、心揺さぶる劇的な人間ドラマがあった、というわけじゃない。

ああ、人災だったんだね、とわかる程度のシナリオなんです。

ただね、事故そのものを限りなくリアルに再現しようとする熱意がこの映画、半端じゃ無い。

序盤からガンガン専門用語が飛び交います。

誰がどういう立場にあって、指揮系統がどうなっていて、掘削作業とはどういうものであるのか、非常に丁寧かつ緻密に描写。

相当綿密な下調べをしているであろうことが序盤の15分ほどではっきり実感できる。

そこから何が伝わってくるかというと、私達が普段のぞき見ることのできない「海底油田掘削事業」の作業者目線による断面。

なんかもうね、NHKのドキュメンタリーでも見てるかのような気分になってくるんですよね。

普段、さして気にかけることもなく車に給油していたガソリンはこんな風に汲み上げられていたのか、ってなもの。

シナリオ云々以前にね、描かれてる特殊な作業に従事する人たちの世界そのものがとにかく興味深いんです。

セットや美術のリアリティも本物かと見紛うほど。

私はてっきりCGだと思いこんでいたんですが、なんとルイジアナ州に町1ブロック分にも及ぶ巨大な海洋プラットホームのセットを建設して、器具類は全部本物を揃えたんだとか。

作り込みに対するこだわりが尋常じゃない。

そんな「再現度の高さ」をキープしたまま爆発事故、そして決死の脱出へとストーリーは進むわけですから、見ていてハラハラドキドキしないはずもなく。

もう、名作ポセイドン・アドベンチャーに迫らん勢いでアクシデントの連続、とっさの判断を迫られる場面が立て続けにやってくるんですね。

見せつけられるのは「誰のせいなのかはっきりしている命の危機」にさらされているというのに、恨み言のひとつも漏らさず、緊急時の対応にプロフェッショナリズムを発揮する人たちの勇ましさ。

かっこいいなんてものじゃないです。

こういう普通の人たちが瀬戸際で「最悪の事態」をいつも食い止めているのだ、と思うと本当に頭が下がる。

リアリズムの勝利でしょうね。

余分な脚色やお涙頂戴を排して、誰がどうおのれの役割を忠実に果たしたのか、その一点に焦点を絞ったことが思わぬ感動を呼ぶ秀作だと思います。

実話ものもここまで丹念に現実味にこだわれば創造性を必要としない好例でしょうね。

シンプルに面白かったです。

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