アメリカ 2007
監督、脚本 ロブ・ゾンビ
78年に発表されたジョン・カーペンター監督作「ハロウィン」のリメイク版。
しかしまあロブ・ゾンビは本当にこの頃のスラッシャー・ムービーが好きなんだなあ、と。
前作のマーダー・ライド・ショーもいうなれば悪魔のいけにえのリブート版みたいなものですし。
あえてハロウィンをチョイスするセンスは悪くない、とは思いますけどね。
ファン気質が高じて監督業に、ってのが言われなくともわかる感じ。
で、肝心の内容ですが、大筋ではオリジナルと変わらないものの、オリジナルでは語られなかった部分、描かれなかった部分が大胆に脚色されてます。
なんせブギーマンがどのような家庭に育ち、罪を犯した挙句、収監され、脱走するに至ったかまで順を追って筋立てする念の入れよう。
オリジナルにストーリーが追いつくのがゆうに30分以上は経過してからなんで、当初は全改稿したのか?と錯覚したほどでした。
ただ、そんな脚色が、より物語に深みを与える結果になったか?というと微妙なところ。
ブギーマンの仮面の奥にある顔が輪郭を結んだのは確かだと思うんですが、何故彼が殺人鬼に変貌してしまったのか、少年時代にまで遡った割には今ひとつはっきりしないんですよね。
その内面の屈折、殺人への衝動が何に由来するものなのか、明確な答えが用意されてない。
彼の面倒を見てきた博士ですら「最初からサイコパスだった」などといい出す始末。
いや、それじゃあ付け足した意味が無いだろう、と。
補足説明みたいな感じになっちゃってるんですよね。
じっくりとその人物像を形作りたかったのはわかるんですが、心理描写に対する踏み込みの浅さは否定できないように思います。
とはいえ、前半にブギーマンの生い立ちを付け加えたことで、副次物的に妹の存在が彼の行動に指向性を付加したことは間違いない。
これ、唯一オリジナルとは違う点だと思うんですね。
ジョンが監督してないハロウィン2(1981)は見てないんで、ひょっとしたら2の筋運びを前倒しして使ってるのかもしれませんけどね。
どちらにせよ、それが悪意の象徴たる殺人鬼にミステリアスな底意をもたらしめた。
なので、難しいところなんですよね。
序盤は蛇足だと言ってしまいたいところなんですが、振り返ってみれば、序盤があったからこそ終盤の無差別殺人に因果にも似た物語性が生じたわけですから。
これが計算だったのかどうかはわからないんですが、今となってはありがちな古典的ホラーがそのおかげで色合いを変えた、というのはあったと思う。
とても熱心に作り込んでることだけは認めざるを得ないでしょうね。
さて、ハロウィンに格別思い入れのない人が見てどう感じるか、いささか不安に思えないわけでもないんですが、オリジナルへの高いリスペクトがあるという点において、私的にはまあ及第点かと。
少なくとも技術的な面に関しては確実に進化してるように感じました。
ジョンはこれを見てどう思うんだろう、なんてふと考えたりしましたね。