KARATE KILL/カラテ・キル

2016 日本
監督、脚本 光武蔵人

KARATE KILL

もうタイトルからして、あの頃の国産アクション映画をもう一度、と謳っているようなもんですね。

そこは言うまでもなくサニー千葉の殺人拳シリーズとか、地獄拳シリーズとか。

この作品を送り出したマメゾウピクチャーズは国際的マーケットを視野に入れた映画を作ることを旨とした制作会社らしいですが、まあ、その心意気は素直に良いんじゃないか、とは思うんですよ。

リスクを恐れるがあまり、人気漫画や人気テレビドラマばかり映画にしたがる先細りビジネスな邦画体質に背を向けて挑戦的であることは、映画好きとしてちょっと応援してやりたい気持ちにもなろうというもの。

けれど、その志に見合うだけの世界基準な内容だったのか、というと、そこはね、うーん、どうなんだろ、と。

ま、正直アンダーグラウンドでB級路線まっしぐらではありましたね。

やってることはものの見事にエログロバイオレンス。

主役のケンジ演ずるHAYATEが殺人空手な手刀で敵キャラの喉笛貫いたり、目玉えぐって派手に流血沙汰かと思えば、ヒロイン役の紗倉まなが意味なく乳だしてたり、ボンテージな外国人女優に全身をまさぐられてたり。

まさにエロスと暴力の狂宴。

いやいや露骨に直球すぎるだろ、と。

シナリオもはっきり言って箸にも棒にも引っかからない部類。

私なんざあまりのわかりやすさとケレン味たっぷりな筋立てに、何度か爆笑してしまったほど。

で、悩むのがね、これはパロディなんだろうか?という点なんですね。

70年代的なものを現代的に精製して焼き直すのではなく、当時の時代性がはらむ不格好さ、荒唐無稽さをあえてそのまま引用して、バカ映画的な立ち位置で勝負したいのだろうか?と。

でもバカ映画で世界に挑むって、それはそれで勇気ありすぎな気もしてきますし。

オマージュと言っときゃ聞こえはいいんでしょうけどね、この仕上がりだと、どうしたってニッチな市場しか開拓できない出来ない、ってのが現実なんじゃないかと思いますね。

わかっててやってるのかもしれませんけどね。

ただ、アクションシーンのみに着眼するなら、空手の経験者であるHAYATEの動きはごまかしのないシャープさ、変な力みのなさがありましたし、動きの連続性を阻害しないカメラワークも低予算映画の割には悪くないように感じました。

なによりHAYATEの顔つきがいい。

あ、これはなにか格闘技やってる人だ、って雰囲気がすごくあるんですよね。

もっと大きな舞台で活躍させたい、と思ったりはしました。

さて、この映画をきっかけに、かつて世界中を熱狂の渦に巻き込んだ空手ブームは再びやってくるんでしょうか。

・・・こないだろうなあ。

最近じゃイコ・ウワイスという凄いのもいますし、本場香港じゃドニー・イェンが超絶ですし、日本でも優れたアクション監督として谷垣健治がいますしね。

まずはそれら強敵の隙間をどのように突いてマメゾウならではのアクション映画を成立させるか、でしょうね。

好事家を満足させるのもいいんですが、長期的展望に立つなら次の一手が欲しいところですね。

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