湖のほとりで

イタリア 2007
監督 アンドレア・モライヨーリ
原作 カリン・フォッスム

北イタリアの小さな村にある湖の畔で発見された、女性の全裸遺体の謎を追うサスペンス。

もうシチュエーションはこれでもかとばかりに本格ミステリの佇まいです。

住人同士見知らぬ顔がないという地域性、外部からの侵入はほぼありえないと思われる閉鎖性、きたきた!横溝正史ですか?それともエラリー・クイーン?ってなもんです。

期待するな、という方が無理というもの。

また監督がね、実にじっくりと登場人物達の人間性や関係性を掘り下げて描いていくんですよね。

もう、なにひとつ見逃すまい、と必死ですよ、こっちは。

ここまで丁寧に描写するからにはさりげないワンシーンに、きっと謎解きのヒントが潜んでいるに違いない、と目を皿な状態。

あれが伏線か?いやそれともあの場面が、と想像を巡らせることしきり。

事件を追う警部のキャラがまたいいんです。

無骨で誤解されやすい感じなんだけど、捜査に一切手加減はしないプロ根性が垣間見える人物で。

ああこりゃ、この警部の奮闘すら裏切るエンディングということだなきっと、と一方的なワクワクが止まらない私。

終盤までは実に楽しかったですね。

あばかれていく新事実が何を意味してるのか、ほんとわからなくて。

で、肝心のエンディング。

もう、ネタバレ覚悟で書きますけどね、さて、誰だー、犯人はー!と、かぶりつきで見てた私を突然奈落の底に突き落としたのは、誰あろう、犯人の自己申告、というありえない締めくくりに他なりません。

えっ?なにこれ?と呆然。

理詰めで証拠を積み上げて、お前が犯人だな、もしくは奴が犯人だったのか!と大慌てなのがミステリの常道なんじゃないのか、と。

わしがやりましてん、へー、そやったんですか、ほな逮捕、って、なんやねんそれ、と。

凄まじいまでの拍子抜け。

恐ろしいまでの盛り上がらなさ。

いやいやこんな風に終わるなんてありえないだろう、と私はエンドロールが途切れるまで、きっとなにかあるはず、と緊張を解かなかったんですが、えーと、なにもなかった。

あっけにとられる、とはまさにこのことでしたね。

ここまで落差なしで淡々とクライマックスを通過してなんとなく終わるサスペンスって、マジで初めて見た、私は。

もう本当にどうしていいものやら。

まあ、おそらくね、殺人事件を透過して見過ごされていた過去のやるせない事実をあぶり出し人間ドラマとした、という解釈がきっと正解だろう、とは思うんです。

広く評価されたのも多分そこでしょう。

でもね、撮り方というか物語の組み立て方は間違いなくサスペンスの流儀なんですよね。

それをいきなりエンディングで、実はそういうことがやりたかったんじゃなんです、って梯子を外されてもですね、見てる側からしたら、肉まんだと思って食ってたら皮の中からほうれん草の煮浸しが出てきて仰天、ってなものですよ。

うーん、なんでしょう、この開き直られた感じは。

変な先入観を抱いたのがまずかったのかもしれませんが、違うだろ、これは、って感触がどうしても拭えないですね、私は。

イタリア本国では非常に評価の高い一作なんで、私の見てるところが全く違うのかもしれませんが、サスペンス、ミステリ好きにはおすすめできない、それは確かです。

私には手におえないですね、なんか色々無理。

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