夏をゆく人々

イタリア/スイス/ドイツ 2014
監督、脚本 アリーチェ・ロルヴァケル

夏をゆく人々

イタリアの片田舎で養蜂家を営む一家を描いた家族ドラマ。

焦点が当てられているのは一家の長女であり、父親の片腕とも言えるほど養蜂に長じたジェルソミーナの気持ちの移り変わり。

まあ、彼女の成長物語、と考えて概ねまちがいない、とは思います。

人の言うことを聞かない上、高圧的で怒りやすい父親からの自立がテーマか、と考えたりもするんですが、なんといいますかこの作品、監督が自分で仕掛けた物語の取っ掛かりを全部何事もなくかわしていく、という実に変な作りになってまして。

いわく、父親が家族に無断でよその少年を更生プログラムの一環として預かってくる。

あ、こりゃ絶対長女となにかあるな、色恋沙汰かいざこざか、もしや流血沙汰か、と思いきや、格別深く2人は交流するわけでもなく、なんとなく尻すぼみで終わる。

まあ、終盤ちょっとした事件はあるんですけどね、それが大きく物語になにか爪痕を残す、というほどではなく。

いわく、長女が父親に無断で一家揃ってのテレビ出演を決めてくる。

ああ、こりゃ揉めるわ、こりゃ下手すりゃ父親手が出るかも、きたかドメスティックバイオレンス、と思いきや、なぜ俺に言わなかった、で終わり。

いわく、次女が遠心分離機に手を挟まれて大怪我したことに動転して生活の糧であるはちみつを派手に床にぶちまけてしまう。

ああ、今度こそ父親狂乱だわ、こりゃ大変だ、なんせ少しこぼしただけで激高してたからな、これはやばいわ、と思いきや、ばれない、で終わり。

一時が万事その調子なんですね。

これ、良く言うなら作為的でなくナチュラルである、ということなのかもしれませんが、悪く言うならストーリーに起伏がなく平坦で普通の日常にダラダラカメラをまわしただけ、ともとれる。

決してドキュメントタッチというわけではないんですが、ドキュメントたろう、とする意図が働いているような気がする、と言うか。

で、肝心なのはそれが面白いのかどうか、ってことで。

私は残念ながらひどく退屈でした。

どことなくミツバチのささやきを思わせる雰囲気もあるんですけどね、同じ不可解さの渦中にあってもあの作品ほど情感の豊かさや、絵的な美しさはここには感じられませんでしたね。

ラストシーンがやたら意味ありげでしたが、それを紐解くヒントもなければ、わかったところでどうだというのだ、としか思えない有様で。

私には理解できない作品でしたね。

どうも至極私的な内容に思えて仕方がないんですが、そこに共感できない人にとっては睡眠導入剤にしかならない、そんな気もしました。

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