2013年初出 鈴木みそ
エンターブレインビームコミックス 1~2巻(全3巻)
鈴木みそ、って漫画家は、みんなが知ってそうで知らないことをうんちくもの、ハウツーもの風に物語とするのが上手な人だと私は思ってて。
路線でいうと青木雄二とか三田紀房に近いと思うんですが、この人の最大の武器は高い画力のあること。
なのに前述2人に比べて圧倒的に知名度がない、というのが私はどうにも不思議でして。
あんまり押しつけがましくない、説教臭くないのがダメなのかなあ、と思ったり。
意外と「こうしろ!」と襟首掴んで断定口調で教え諭すぐらいの内容のほうが不思議にうけたりするんですよね。
そこはね、たとえ鈴木みその方が漫画家としての総合的な実力は圧倒的に勝っていようとも。
はがゆいなあ、と私なんかは常々思ってたりしたんですが、いやまて、今度こそいけるんじゃないか、と思ったのが実は本作。
主人公はナナという女子高生なんですが、描かれてる内容はほぼメタフィクションと言っていいでしょう。
鈴木みそ吉という名の漫画家は出てくるわ、コミックビームの名物編集長奥村氏は出てくるわで、それがですね、ナナをまじえて真剣に漫画業界の未来を語ったりする。
これが面白くないはずがなくて。
電子書籍と漫画家個人、出版社の関わりに言及したくだりなんて、考察力の見事さに、漫画家にしておくのは惜しい、とすら思った。
多分、ほとんどの漫画家はこんなこと考えてないと思うんですよね。
往年の傑作「編集王」をちょっと思い出したりも。
ある意味、禁じ手か、と思えるようなアプローチもあるんですが、今、これを恐れずやれるのは多分コミックビームだけだと思います。
そういう意味でも貴重。
どうなるんだろう、このままリアルとシンクロしたまま物語は進んでいくのか、と今ちょっとドキドキしてるんですが、とりあえず2巻はゲーム業界の話にシフト。
もしこれがこのまま続いていけばエッセイとメタの端境を行く異形の実録虚構漫画になると思うんですが、とりあえずは続巻に期待ですかね。
新しいジャンルの先駆者となるのか、それともしぼんでしまうのか、個人的には要注目の一作。