ノルウェー 2014
監督、脚本 グンナル・ヴィケネ
40年間営んだ高級家具店が、目と鼻の先に出来たIKEAのせいで閉店に追い込まれてしまった初老の男の、IKEA創業者誘拐劇を描いたコメディタッチの人間ドラマ。
とりあえずIKEAとその創業者イングヴァル・カンプラードが実名そのままで出てくるのはちょっと驚かされましたね。
これがアメリカあたりだと訴訟沙汰にも発展しそうな気がするんですが、そのあたり北欧は寛大なんでしょうか。
うーん、わからん。
それはまあともかくとして、何の計画性もなく行き当たりばったりでカンプラードを誘拐してみたはいいものの、なにをどうしたらいいのかわからない主人公のうろたえぶりを描いた前半は、なかなかツボをおさえていて、愉快だったように思います。
偶然知り合った15歳の少女が誘拐劇に一枚噛んでくる展開も悪くない。
この少女の存在が、物語の落とし所を決めるキーとなっているのも、後々振り返ってみればうまいな、と思わされたり。
それほど劇的な展開があるわけでも、誘拐劇そのものが実にスリリングなわけでもなく、どっちかというとややゆるめの内容ではあるんですが、小さな笑いの裏側にきちんと主人公の悲哀が息づいているのが不思議に説得力を産む結果になっている、とは思いましたね。
ふいに感情を揺さぶる美しいシーンを挿入してくるのもあなどれない、と思った。
もう少し各登場人物のセリフを吟味、推敲してたらもっと良くなったのでは、と感じたりもしましたが、だからといってつまらない、ここが決定的にダメ、と思える点があるわけでもない。
どちらかといえば小品かとは思いますが、こういう作品が映画文化を支えてるような気もします。
止めようのない世の中の流れからつまはじきにされてしまったとき、人はなにを心の拠り所としたらいいのか。
ささやかなヒントを提示した良作だと思います。