恋の門

1998年初出 羽生生純
エンターブレインビームコミックス 全6巻

作者の名を世に知らしめた出世作。

いかにも「らしい」キャラ設定の特異さや、突拍子もない展開、王道たるラブコメ的アプローチのバランスの良さがヒットの要因か、と思ったりもするんですが、私が優れてると感じたのは普通に恋愛する大人が直面するであろうあれやこれやの障害をばかばかしさの渦中できちんと正面から描いている点ですかね。

コスプレイヤーだとか、変人漫画家だとかいった後付けのパーソナリティを、恋する気持ちがどう飲み込んでいくのか?をつづった筆致は思いのほか正当にラブロマンスだったような気もします。

変に浮ついてなくて一直線に怒涛なのもいい。

そのまま埒外な人間同士の想いの成就を素直に描いても別に良かったのでは、と私は思うんですね。

ところが終盤、ちょっと肩に力が入りすぎたのか、いささか余計なエピソードを作者は盛り込んでしまう。

とりあえず土壇場に及んでヒロイン恋乃が遭遇する不幸は蛇足だった、と思います。

どこか物語をエキセントリックに盛り上げるための方便に見えるんですよね。

あとは主人公が恋乃のどこをそんなに好いているのかが、幾分見えにくかったのが難点か。 

読み応えのある作品だとは思いますが、まだ充分に消化し切れてない、というのは読後の印象として残りました。

爆発前夜と言った感触。

シュールなお笑い路線からの転換点となる一作だと思いますが、世間の評価とは裏腹に、私はまだのびしろがある気がしますね。

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