レディ・キラーズ

アメリカ 2004
監督、脚本 コーエン兄弟

55年のイギリス映画「マダムと泥棒」のリメイク。

コーエン兄弟ほどの芸達者がわざわざリメイクやらなくてもいいんじゃないのか?と思ったりもしたんですが、まあそこは大人の事情も絡んでるのかもしれません。

で、一言で感想を述べるなら、既視感たっぷりのコメディ、といったところでしょうかね。

物語の立ち上がりは、老婆が住む家の地下室からカジノの売上金を強奪しようと計画する泥棒たちが、身分を偽って老婆に接近する場面から。

楽団を偽って地下室を定期的に使い、掘削を進めるが、なにかと老婆の邪魔が入ってなかなか事が上手に運ばず・・・って、もう、ここまで見ただけでなにがどう転ぶのか全部予測がつく。

型としてやっぱり古典的な笑いだと私は思うんですね。

予定調和と言ってもいい。

だとすればリメイクする上で何に腐心すべきかというと、予定調和に見せかけた定石崩しなのではないかと私は思うんです。

おばあちゃんには泥棒もかなわないや、みたいなところに着地するのではなく。

それが難しいならせめて5人組の泥棒たちのキャラクターを現代的に刷新するとか。

結論から言うと、そのどちらもコーエン兄弟は叶えてくれませんでしたね。

どこか生ぬるい。

特に私がひっかかったのはトム・ハンクス演じる教授のキャラ。

これはさすがにあざといし、わざとらしすぎる、と閉口。

あんなコント芸人みたいな教授は今時居ないと思うんですよ。

小さな笑いがたくさん散りばめられてるのは楽しめましたし、猫を狂言回し風に隠れた立役者として配置したセンスにも脱帽したんですが、それを加味したとしてもですね、このベタさ加減はどうしたものか、と。

唯一、こりゃブラックにひどすぎて最高、と思ったのは泥棒たちの末路。

ばかばかしくも悪ノリで、こりゃいい、と喝采。

らしい、と思ったのはそこぐらいですかね。

実に安定感のある作品なのは間違いないんですが、もうちょっと八方破れなほうが私は好みですね。

あまり落ち着いて欲しくない場所に腰を据えてしまった印象の一作。

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