火の山のマリア

グアテマラ/フランス 2015
監督、脚本 ハイロ・ブスタマンテ

火の山のマリア

グアテマラの火山のふもとで農業を営む貧しい一家に生まれた1人娘の、ままならぬ恋路を描いた人間ドラマ。

さてこの作品がどこまでグアテマラの農家の実状をリアルに描写しているのか、浅学なものでわからないんですが、最後まで見終わって思ったのはまるで江戸時代の日本のようだ、ってこと。

いわく、自分の土地を持てない農家である主人公一家が、生活のために娘を土地の所有者の嫁へとさしだそうとする画策であったり。

当然のように反発する娘。

けれども古くからの慣習を守り実直に生きる両親に、娘は面と向かって結婚は嫌、と言えない。

とはいえ本人も漠然としたアメリカへの憧れしかその胸の内にはくすぶっておらず、事態を覆すためになにをどう行動していいのかわからない。

挙句に頼るべき人物を間違えて私生児を孕んでしまう始末。

描かれているのは無学ゆえ何の解決策も打開策も見出せない虐げられた人々の苦悩。

また行政が言葉の通じないのをいいことに、問題に取り組もうという姿勢すら見せないんですよね。

とても21世紀の出来事だとは思えない痛々しさ。

でもこれが後進国の偽らざる現実なんだろうなあ、と。

演出やディフォルメはあるかもしれませんが、きっとこんなことは今も世界中で普通に起こってることなんだろう、と思います。

資本主義社会の抱える歪みを、先住民族の現実に視線を合わせることで真正面から表出させた監督の情熱は高く評価されるべきでしょうね。

また出演しているグアテマラ人俳優の演技がまるでドキュメンタリーでも見てるかのような自然さなのも特筆すべきだと感じました。

色々と考え込んでしまう作品。

ラストシーン、マリアのどこか遠くを見つめて焦点を結ばない表情がひどく心に残ります。

私達の普段飲んでるコーヒーは、誰の手を経てこの場所にあるのか、それを知る意味でも一度は見ておくべきかもしれません。

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