叛逆の家紋

1971~75年初出 平田弘史
青林工藝舎

<収録短編>
吉田松陰
介錯
豪傑
叛逆の家紋

油がのりきってて手がつけられない、と読んでいて実感する充実の短編集。

絵柄が全盛期のものに近いタッチに変わってきていることもあってか、なんだかもう血生臭さが誌面から匂いたってくるかのようです。

その問答無用な迫力、むせかえるような熱量たるや半端じゃなし。

どの短編も読み応えたっぷりなんですが、作者らしい、と一番感じられるのはやはり表題作「叛逆の家紋」ですかね。

武家のつまらぬしきたりに翻弄され地に落ちた主人公が最後に何をしっぺ返しとしたか、これぞ平田時代劇、と唸らされましたね。

異色作なのが「嘘」。

こういう題材を真剣に、笑いなしでやってしまうのが平田弘史の恐ろしいところだと思います。

世紀の怪作「始末妻」にも通づるものあり。

歴史上の有名人の一生を漫画化した「吉田松陰」も作者ならではの解釈と考察があって、なんとも独特。

格別突出した一編はないもののファン必携の一冊と言っていいと思います。

現代漫画家が10人束になったって勝てやしない濃厚さに、なんかもう酩酊しそうになりますね。

凄いわ、やっぱり。

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