1968年初出 平田弘史
青林工藝舎
<収録短編>
烈願記
日陰者の死
荷駄隊始末
刃返斬法
刃返し斬法
反骨刃傷記
喪根記
無骨者
武人鬼
平田節の冴え渡る短編集ではありますが、さすがに「血だるま剣法」や「それがし乞食にあらず」ほどのインパクトを残す作品はなし。
あえて秀作をあげるなら表題作「烈願記」「反骨刃傷記」といったところでしょうが、その2話も、予測不能な筋立ての割には落とし所があっけなくてさほど胸には響かず。
まあ、これを不出来と言ってしまってはほとんどの時代劇漫画がダメだ、ってな話にもなってしまうわけですが。
元々の地力が凄すぎるんですよね、平田先生は。
160キロ以上の剛速球が当たり前のピッチャーが、その日はたまたま最高の球速が155キロだったからって、即もうあいつは使えない、とはならないわけで。
155キロだってとんでもないボールなわけですし。
興味深かったのは「刃返斬法」。
斬った相手が時間差で死に至る魔剣の使い手を描いた剣術ものなんですが、平田弘史もこんな作品を描いてたんだなあ、と意外でした。
まるで白土三平の初期の忍術もののよう。
ちなみに同時収録の「刃返し斬法」はオリジナル。
リメイクの「刃返斬法」とは全然物語の組み立てが違ってて、安直な焼き直しを良しとしない先生の志の高さに頭が下がります。
ファンなら押さえておくべきでしょうね。