アメリカ 2019
監督 ニール・マーシャル
原作 マイク・ミニョーラ
2004年にギレルモ・デル・トロの手によって映画化されたアメコミ作品のリブート。
ぶっちゃけデル・トロ版を見たのが昔過ぎて、細かい内容とか全然覚えてなくてですね、双方の比較はなかなか難しいものがあったりするんですけど、ああ、シンプルにヒロイックファンタジー化したなあ、とは思いましたね。
ヘルボーイというと人外のダークヒーローであり、アンチヒーローなわけですけど、オリジナルでは人あらざる滅私の正義執行者だったはずで。
悪魔の申し子みたいなものなのに、他種族である人類のために体を張るスタンスがぐっとくる、みたいな。
デル・トロはそこを掘り下げて「異形の孤独」にまで言及してた、と思うんです。
本作でも同様にヘルボーイは己の出自に苦悩するんですけど、それがね、なんとなく高校生が「お前なんか本当のパパじゃない!」って拗ねてるみたいな演出になってまして。
なんだかやたらと人間臭いというか、幼いというか。
おそらく原作の要点だけ押さえておいて、クライマックスの人類存亡の戦いに尺を割きたかったんでしょうけど、それが凡俗化を招いちゃってることは確かでしょうね。
ヘルボーイをヘルボーイたらしめているのは、マーヴェル一連の作品群にも見当たらない「主人公の異形性」なのは間違いないわけで。
そこを軽く流してしまうとどうしたってオリジナリティが希薄になる。
アメリカ本国で酷評されたのはそのあたりが原因かと。
やっぱりね、MCUやDCEUが何年もかけて根こそぎ刈り取っていった耕作地で、似たようなテーマと題材でもって育苗、収穫しようにも土地そのものがもう痩せちゃってる、って話でね。
ヘルボーイというキャラをもう少し大事にするべきだった、とは思いますね。
ただ、アクションシーンのみに関して言うなら、充分観客の期待に答えるものだった、とは思います。
切り株映画さながらの大乱闘シーンや、バーバ・ヤーガとのグロさ満点の謁見シーンは私のようなホラーファンですら「なかなかやるな」とほくそ笑む仕上がり。
特にエンディング間近の地上に悪魔が湧いて出る場面は迫力満点。
進撃の巨人かよ!ってな禍々しさで、人が宙に舞うんだからそりゃR15にも指定されるわ、ってなもの。
やりすぎだ、って人も中にはいるかもしれませんけどね。
結局、何も考えずに見る分には適度に過激なオカルトバイオレンスで良い、ってことなのかもしれません。
あと、個人的には主役のデビッド・ハーバーがなんとなくしっくりこなかったり。
どこか貧相に見えちゃうんですよね、この人。
ざんばらの髪の毛も薄汚く感じられて仕方ない。
ロン・パールマンに対する思い入れが過ぎるのかもしれませんけど。
総じて決して出来が悪いとは思わないんですけど、類似作と似た轍を歩いてしまったことが敗因か、と思ったりはしますね。