アメリカ 2015
監督、脚本 クエンティン・タランティーノ
南北戦争後のアメリカを舞台にした西部劇仕立てのサスペンス。
まあとにかく長え、というのはありましたね。
タランティーノの場合、いつものことではあるんですが、もう少しコンパクトにまとめられなかったものか、と思ったり。
前半で振り落とされかけたかけた人もきっと居たことでしょう。
その反面、ウィットに富んだ会話劇が長丁場を退屈に感じさせなかったのもこれまた事実。
ほんと長い、と思いつつも、どこか引き込まれるものがあって、先の展開で何か見落とさないためにもここは油断できない、と受ける印象に反して強引に集中させられちゃうんですよね。
こりゃ、テクニックなんだろうなあ、やっぱり。
なんだかんだ言って、こうも饒舌にウィットに富んだ脚本を書ける人はやっぱりなかなか居ないでしょうし。
見終わって振り返ってみても、破綻がない、と思ったし、なによりキャラクターの作り込みが半端じゃない。
物語のキーマンたる数人がどういう人物なのか、性格から背景に至るまで緻密にガチガチに固めてますしね。
しかもどういう状況で誰と誰がどういう関係にあって、なぜこのような状況を招くに至ったか、すべて話して聞かせてくれるわけですから。
実は親切すぎるぐらい親切な映画なのでは、と思ったり。
で、その前提があったからこそ終盤の密室殺戮劇が尋常ならざる緊張感、臨場感を産んだ、ともいえるわけですし。
厳密に言うならそれほど謎めいた謎もミステリも用意されてはいないんですが、誰一人信用できない冬山の一室で、丁々発止のやりとりを交わす悪党ども、という絵ヅラだけでもう充分おつりがくるぐらいスリリング。
あ、これはレザボアドッグスの西部劇版だな、と思ったりもしました。
タランティーノらしさ、という意味で全く意外性はありませんが、安定の監督印を求める向きにとっては問題なく楽しめる一作ではないでしょうか。
リンカーンの手紙、というギミックがまた小憎らしい。
久々に見た悪いカート・ラッセルもファンとしちゃあ心揺さぶられました。
ハードル上げ過ぎちゃあいけないとは思いますが、広く満足感を得られる大人のエンターティメントだと思いますね。
やはり「さすが」と言わざるを得ないか。