ファーゴ

アメリカ 1996
監督 ジョエル・コーエン
脚本 コーエン兄弟

ファーゴ

アメリカ中北部の田舎町を舞台とした偽装誘拐事件を描くサスペンス。

とはいえ実はタイトルにもなってる地名のファーゴとは架空の街。

よって、この作品は実話が元である、という作品冒頭のテロップも実は嘘。

コーエン兄弟なりのジョークだったようですが、それはいったい何に対する当てこすりなんだとつい深読みしてしまったりも。

やはりなんといっても秀逸だったのはキャラクター作りで、その立て方。

偽装誘拐を計画する主人公もそうなんですが、その義父、犯人、それを追う妊婦の警察署長、それぞれがそろいもそろって強烈な個性を発しているんだから本当に大したものだと思います。

シリアスな犯罪ドラマなのにこそっとユーモアを忍ばせてるのもいい。

登場人物たちの行動をやトークを追っているだけで充分楽しめます。

少し気になったのは、なにゆえ主人公はこんな大それた犯罪計画をでっち上げたのか、その動機や心情がまるで描かれていないのにも関わらず、 警察署長の実生活については過去の同級生まで引っ張り出してやたら丁寧に描写されていること。

それ、別に必要ないのでは、と思えるようなシーンまで逐一拾い上げてるんですね。

どこかぶっ壊れた連中ばかりが登場するこのドラマ、あえて署長の生活にのみリアリティを持たせることによって観客の事件を眺める目線を、署長側に誘導しようとする意図があったのかもしれません。

狭量な価値感や思い込みを広い視野に立つことで対比させようとしているのだとしたら、それは実に効果的だった、といえるでしょう。

全てはパトカーの中で署長が思わず呟いた言葉に集約されてますよね。

あっ、と驚くオチもなければ劇的な終焉が待ち受けているわけでもないので、え、これで終わり?と思った人も中には居たかもしれませんが、私は不思議に好きですね、この作品。

誰が何をやらかすのか予想のつかない妙な緊張感と、署長だけが支配することを許される独特な間があったように思います。

彼らにしか作れない一品でしょうね。

ところで埋められたトランクはその後どうなったんだ?

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