かむろば村へ

2007年初版 いがらしみきお
小学館ビッグコミックス 全4巻

都会暮らしに疲れたサラリーマンの田舎暮らしをコメディタッチで描いた作品なんですが、なにやらきな臭く含むものがあって一筋縄でいかない感じなのが作者らしい、と思いましたね。

都会の人間が想像するところの田舎暮らしに対する淡い幻想を早い段階で粉々に砕いてしまうのも独特なんですが、田舎での生活に慣れない主人公のドタバタ劇の裏側でなんだか不気味にホラーな謎が渦巻いているのがこれまたそそられる感じ。

人間ドラマに着地するように見せかけて、さりげなく、地域性の違いと言うだけでは割り切れぬ常識外の「怖さ」が実に巧みに描かれてます。

村社会の閉塞性が原因、移住者の人格に原因があるのではなく、そもそもが相容れることの出来ぬ「全く違う何か」なのだと暗示するような作劇は、無理解の薄ら寒さを実感させるものがありましたね。

いったいどこへ向かおうとしているのか、先の展開が全く読めないスリルは一級品だったと思います。

いささか残念だったのはオチが弱いように思えたこと。

なんとなく煙に巻かれてしまったような印象を受けてしまうんですね。

とはいえ、いがらしみきおならではの「田園に潜む狂気」は充分堪能できる内容だと思います。 

最後に失速してしまった、と感じる人もいるかもしれませんが、こういう事のできる漫画家は他に居ないと思うんで、SINK以降のファンなら納得かと。

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