アメリカ 1994
監督 ジョエル・コーエン
脚本 コーエン兄弟、サム・ライミ
会社ぐるみの陰謀によって新社長に抜擢された、社内郵便物配達係の思惑外れな大活躍を描いたドタバタコメディ。
いやもう、問答無用で楽しいです。
爆笑ポイントが連鎖誘爆するがごとく全体に網羅。
基本、ベタな笑いではあるんですけどね、それこそ会話の間で笑わせるパターンから、動きで笑わせるパターンまで、考えつく限りを全部ぶち込んだ上で、まったく手綱を緩めることなく徹底して最後まで「笑わせてやろう」という姿勢を崩してないのが私は気に入りました。
アメリカのコメディではありがちな、中途半端に下ネタでご機嫌を伺おうとしてないのもいい。
特に出色だったのはヒロインのジェニファー・ジェイソン・リー。
結構な美人さんなのに妙なコメディエンヌぶりが板についててそのギャップがおかしくて仕方ない。
タイプライターを打つシーンなんて、絵ヅラと動きを見てるだけで腹を抱えた。
登場人物の誰もがどこか変な人なのに反して、主人公だけが唯一常識人っぽいという構図も良く練られてるなあ、と思った。
そこまで会社組織の縦割り社会をおちょくるのか、と。
オチも秀逸。
まさかクライマックスでここまでナンセンスなことを臆面もなくやらかすとは、と愕然。
ケレン味が良質なファンタジーの頂にまで手をかける瞬間を初めて見た気さえしました。
そりゃちょっと褒めすぎか。
唯一、あれっ?っと思ったのは、コーエン兄弟らしい冷静さというか、毒と言うか、識者受けしそうに思える部分があまりなかったこと。
これは脚本に参加したサム・ライミの影響かもしれません。
これまでになくサービス精神豊かな感じなんですよね。
最大公約数すぎる、と言う人も中にはいるかもしれませんが、だからといってこれを凡俗なコメディと言ってしまっちゃあ本来楽しめるはずのものまで指の隙間からこぼれ落ちてしまいそう。
私は大好きですね。
コーエン兄弟が苦手な人も楽しめる親和性の高い傑作コメディだと思います。