パリ3区の遺産相続人

パリ3区の遺産相続人

アメリカ/イギリス/フランス 2015
監督、原作、脚本 イスラエル・ホロヴィッツ

ヴィアジュと呼ばれるフランス独特の不動産契約のせいで、90歳を超える婆さんつきの物件を知らずに相続してしまった男性の周章狼狽ぶりを描いた人生ドラマ。

これが初監督作品となるホロヴィッツですが、70歳を超えての挑戦とは思えぬ安定した仕事ぶりには素直に感心。

ふいに目を奪う美しいショットなんかもあったりして、さすがは70年代から戯曲を書き続けた人だけはある、と「年の功」なんて言葉が思い浮かんだりもしました。

何を見せるのか、物語をどう構成するのか、迷いがないんですね。

やはり長きに渡って演劇の世界にたずさわり続けていた人ともなれば、経験則でこれぐらいはできてしまうのか、それとも門前の小僧状態なのか、あまりに手馴れてるんで内容とは関係ないことをあれこれ考えてしまったり。

もちろんヒットした舞台が元になっているだけはあって、ストーリーもよく出来てます。

複雑怪奇に入り組んでいく展開に、これいったい、どう落とすつもりなんだ?と先が読めなくてハラハラさせられましたね。

不倫が重要なテーマになってるんで、見る人によっては「スッキリしない」なんて意見もあろうかとは思いますが、私はこれ、愛によって破れ、愛によって救われる人の滑稽さを描いた作品だと思った。

運命は残酷で、過ちが因果を生むのは間違いない、でも、だからこそ出会えた偶然もある、と監督は語りかけます。

「とはいえ罪は罪、たとえ過去のことといえど償いは必要」と考える学級委員長的良識が大好きな人にとってはどいつもこいつもバカばっか、で終わってしまいそうな気もしますが、私はね、人生の不条理さってこんなものだ、と思うんですね。

その不条理さをあえて受け入れることで救われることもある、と気づかせてくれるのがこの作品だと思います。

戯曲が元になっているだけあって、登場人物達があまりにしゃべりすぎ、と思った事と、終盤、いささか駆け足気味にバタバタとまとめられてしまったことが残念ですが、及第点以上の作品だと実感。

まあ、ご都合主義的、といわれてしまえばそれを否定する言葉は出てこないんですが、結果的に仲良くやれるんならそれでもいいじゃない、と私は不思議にシンパシーを感じてしまった。

いい映画だと思います。

とりあえず主人公のマティアスは働け、とは思いますが。

中年以上の人たちにおすすめですかね。

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