ブレーメンⅡ

2000年初版 川原泉
白泉社ジェッツコミックス 全5巻

さしずめブレーメンの音楽隊、宇宙へ行く、ってなところでしょうか。

少子化が進んだ結果、危険な宇宙船の乗組員を、知能を人工的に向上させた動物に任せるよりほかなくなった、と言う設定はあまりに無茶苦茶かと思わないでもないですが、そもそもがコメディタッチの作品なので、そこはまあ、目くじら立てるほどでもないか、と思ったりはします。

人語を解する動物が乗組員であると言うことが独特のおかしさをかもしだしていることは間違いないし、航路の途上に立ち寄った星で色んなトラブルに巻き込まれた際の対処もヤギだのクマだのカエルだのがその身体能力、特性を発揮して大立ち回りというのも愉快。

また、門外漢のために一から丁寧に惑星についてや宇宙空間を飛行することについて解説しているのがおもしろい。

大抵のSFはいちいち説明しないで専門用語の羅列で次にいきますしね。

そのせいでどんどんSFは初心者にとって狭き門となってしまっているわけですが、もしわかりにくさでこれまでにつまずいた人がいるなら、まず本作を読めばいいと思います。

非常に理解しやすいです。

フライバイ航法をマンガで解説しているのは初めて見ましたね。

また、そういう専門的な知識をマンガで説明できる川原泉の博識さにも驚かされました。

おおむね楽しく読めたし、突飛ではあるが良くできたSFコメディだ、とは思うものの、残念ながら個人的に唯一ひっかかったのは川原マンガの「ノリ」。

いや、手抜きなんだか確信犯なんだかわからない火星人のばかばかしさには爆笑したんだけれども、それ以外では残念ながら、ほとんど笑えなかったんですよね。

熱烈なファンがいることも知っているし、この「ノリ」が人気の源なんでしょうが、あたしゃその肝心な部分で同調できなかった。

笑えなきゃダメだ、ってこともないんでしょうが、この「ノリ」が駄目だと作品の魅力の半分は味わえてないと思う。

すいません、がきデカ世代なもので。

川原ファンでSFにも興味のある人にとっては大好きな本になるかもしれない、とは思います。

ところでブレーメンⅠって存在するのだろうか。

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